第10章 9杯目
「じゃあ、オレはこっち探すんで。アンタは談話室探してください」
「普通逆じゃないですか?ラギー先輩がさしてるの、私の寝室だと思うんですけど」
「当たり前でしょ、探すの手伝うって言ってるんすよ?無駄に広い談話室、探すの手伝うって言う先輩に狭い方頼むのが常」
「さりげなくディスりましたね?…わかりました。お願いします」
ぐうの音も出なくて、遮るように言った。
探すの手伝ってもらえるならいいや。
なんて…
と言うわけで、私は談話室。
ラギー先輩は私の寝室へ。
なにも思わず、あの日の確信を探す。
ーーー
ーー
「監督生くん、見つかりました?
オレのとこはなかったッス」
ラギー先輩が、私の方に顔を出したのはそれから数十分後。
「寝室にはなし…」
「んー、談話室もなさそう」
一緒に探してくれていたラギー先輩まで耳を垂れている。
「力になれなくてごめん」
「そんな、ラギー先輩が謝ることなんて全然ないです!
むしろ、手伝ってもらってありがとうございますっ。
お菓子でも食べて休憩しましょ??」
「…さっすが、監督生くん!ちょうど腹減ってたんっすよ!
飲み物もおねがいするっす!」
「調子いいなぁっ。わかりましたよー」
なんて、そうしてるうちにグリムも帰って来て。
「トレイからもらってきたんだゾーっ!!って!ラギーのやつまでいるのか。
って、監督生なにしてるんだぞ??」
「ラギー先輩が探し物手伝ってくれたお礼。グリムも食べる??‥って、流石にお腹いっぱいかな?」
「別腹なんだゾっ!」
「そっか、じゃあ手洗っておいで」
パァあっと笑ったグリムが洗面所に行っている間に、3人分の紅茶と、ミルクと砂糖。
それから、クッキー缶を持っていく。
前にマブたちからもらったものだ。
「グリムくん帰って来たんすね」
「はいっ。なのでグリムも一緒にオヤツです」
「そっか」
「あぁ、紅茶冷める前に飲んでくださいねっ。
お茶請けドーナツじゃなくてすみません。
でも、このクッキーも美味しいので、ぜひ」
「ラギーばっかりずるいんだぞ!」
「オレはお客様っすから。いただきまーっすっ」
先輩の立派な犬歯がクッキーをくだく。
粉々に。
「たくさんあるから、2人とも落ち着いて」