第10章 9杯目
ラギー先輩の大きいため息。
納得いかない。
「ところで監督生君、ケイトさんと仲直りしたんすか?」
いつまでラギー先輩いるんだろうと思いかけた時、何個目かのドーナツを口に入れた先輩。
「仲直りって」
「シルバー君のことで喧嘩してましたよね?」
「あぁ………、その節はどうもありがとうございました。おかげさまで、そっちの方は、はい。解決?しましたよ」
「歯切れが悪いなー。相談料、今なら」
「いや、今月金欠なんで遠慮しておきます」
「えー。って、今月じゃなくてこっち来てからずっとでしょ」
「しょうがないじゃないですか、着の身着のまま来たんだから」
「そこで、オレに提案があるんすけど」
「悪徳商法は、おたくだけで十分です」
「一応言っとくけど、おたくじゃなくてオクタね」
…。
わかってっし。
オクタって、わかってっし!
と、心の中で負け惜しみを言ってると、ラギー先輩が割と本気で言ってくる。
「わっかんねー。オレが女なら、うまいことレオナさんの懐に入り込んで、一生楽に暮らすけどなー。王族っすよ?レオナさんもアンタのこと気にかけてるみたいだし、ケイトさんの何がそんなにいいんすか?」
何かにつけて、最近この質問されてるような。
「…それが、よくわかんなくて。よく分かんないけど、この人ならキスしてもいいなって思ったというか、漠然と」
「は!?」
耳が痛い。
「抱きしめてあげたいなーって」
急に黙った獣人を盗み見れば、耳まで真っ赤に………は、正直毛に隠れた耳じゃ分からない。
顔は真っ赤になってたのは確かだ。
思春期かなー。
可愛いなー。
先輩可愛いー。
と、ろくでもないことを思いながら、勝手に動く口。
私考えたこと、すぐに口に出しちゃうタイプだから。…たぶん。
「思ったんだけど、実際されるとキャパオーバーで」
「し、したんすか?」
「たぶん?」
「たぶんって??」
「昨日、ハーツに行ったんですよ、ケーキ食べに。それで、流れでラーメン作ってケイト先輩の部屋に行ったんですけど…」
「夜中にラーメンは太るでしょ」
茶々を入れてくるから、ベシッと叩く。
いい子は真似しちゃだめだよ?