第2章 1杯目
「トレイくーん」
「あ?どうしたケイト」
「次のなんでもない日のパーティーのことで。…って監督生ちゃん?珍しい組み合わせだね」
「ケイト先輩、こんにちわ。トレイ先輩、私が頼まれてた片付け手伝ってくれて」
「あー。エーデュース君たち?」
「そうだ。後輩の尻拭いも先輩の役目だろ?」
ニヤッと悪戯に笑ったトレイ先輩に、うわぁ…と嫌な顔をするケイト先輩。
「で、なんだ。パーティーのことって」
「あぁ。それがね」
邪魔してはいけないと、立ち去ろうと声をかける。
「じゃあ、先輩たち、私戻りますので」
軽音部に行かずとも、会えてラッキーだ。
そう思ってたのに、ぐいっと組まれた腕。
先輩の携帯を持った腕で組まれたせいで、変に肩が持ち上がる。
「トレイ君、次はこれでいい?」
マジカメの写真を何枚か見せている。
「あぁ、いいと思うぞ」
ケイト先輩に拘束されてると言うのに、こんな異様な光景に何も言わないトレイ先輩。
「あの」
「で、色味はこれで行こうと思ってて」
「あぁ、いいんじゃないか?」
「だよね」
「あの」
「よし、じゃあ決まりね。
おまたせ。じゃあ、行こうか。監督生ちゃん」
約束も何もないのに、何でもないようにそのまま引きずられる。
「え、あ、はい。って、くるーえるせんせいに」
「クルーウェル先生には俺から報告しておくから、大丈夫だぞ」
「何から何まですみませんっ、て」
笑顔のトレイ先輩に見送られ、訳もわからずケイト先輩に連れていかれる。
一体なんだと言うんだ。
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ーー
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ずかずかと進む先輩の、意外にも強い力がパッと離れたのは人影がなくなった中庭。
「ケイト先輩?」
急に止まった先輩に、顔面をぶつける。
「んー、はずれ」
「え?」
パチンと指を鳴らす音が聞こえて、
【スプリット・カード】
どこからか聴こえた声に、舞い落ちたトランプ。
「ハズレ。お疲れ様、オレくん」
「ケイト先輩…」
木の影から出てきた、今度こそ多分、本当のケイト先輩。
「どうしたんですか?」
「今日は、部室に来ないなーって思ってたら、トレイ君とイイカンジだったみたいじゃん?」
「え、っと」
「オレさびしかった」
冷たい指先が頬に触る。