第10章 9杯目
『9杯目』
「あのー…」
「何だ」
「そろそろ膝が痛いなって」
「はっ、軟弱なやろーだな。そんなんで、サバンナで生きていけると思ってんのか?」
「サバンナに住む予定はないので、今のところその心配はご無用ですね」
どうにかこの膝に乗る重い頭をどかしたい。
「らーぎーせんぱぁああい!!!」
パシパシと尻尾で私を叩きながら、その声に耳を塞いだ先輩。
ちょっとうるさかったらしい。
「早くきてくださぁああい!!!!」
「ばか、耳が壊れる」
「る」
ルーク先輩でもいいと、叫ぼうとすると今度はほんとに口を塞がれた。
がるるっと喉を鳴らしている。
「大体、留年ができる先輩と違って、私はそんな余裕ないんですよ。
はっきり言って、リーチ兄弟先輩?先輩兄弟?どっちでもいいですけど、その2人とアズール先輩人魚が人間界に来てとかドヤ顔で言ってますけど、そもそも私時空超えてるんですよ。
住む世界違うどころの話じゃないんですよ、ご存知の通り」
「…」
「チェカ君より、この世の中の真理わかってないんですよ。
だから、学校にいきたいんです。わかります??」
必死で訴えるのに、呑気に私の膝下でくぁあっと欠伸をする先輩。
あまんじて、受け入れてる私もどうなんだろう?
「知らないことを知らないままにしておきたくないし、臭い物に蓋をするっていう考え、ゴメンなんです!」
「ギャンギャンうるせぇ」
「だいたい、なんで私を枕にするんですか?」
「当たり前だろ、筋肉ねぇし柔らけぇんだから。少しは鍛えたらどうだ?」
「な、っ」
「あと、最近あいつの匂いがするから気にくわねぇんだよ」
「え?」
と、不貞腐れてまた寝息を立て始めた先輩。
いや、アイツって誰だよ。
ゴロゴロと喉を鳴らすから、仕方なしに頭を撫でる。
あれ?猫ってどこ撫でるのが良いんだっけ??
などと、撫でくりまわしていると、撫でていない方の手に尻尾が絡みつく。
なんだこれ、余計動けなくなったぞ。
「らぎーせんぱーい」
いい加減来てくれてもいいのに。
ーー
ー
ラギー先輩がきたのは、それから小一時間後。
デラックスサンドを小脇に抱えて、この状況に変な顔をしている。
「おい、コラ先輩。あんたのとこの寮長どうにかしやがれ、副寮長」