第9章 8杯目
「綺麗なまま残しておこうなんて、無理だよ」
綺麗なままの思い出なんて、永遠に残るわけでもない。
「オレは、傷だらけにしてでも、彼女の中に残りたい」
彼女をこの世界に繋ぎ止めておけないなら、
「染み付いて取れない、トラウマみたいに」
どんな手を使ってでも、
「忘れようとしても忘れられないように、重くて良い、だから、邪魔するな」
向こうの世界でも、誰にも奪われないように。
「なら、せめて」
「…」
「せいぜい、オレに取られないように頑張ってくださいよ、センパイ。
オレをコマに使うな」
違う、コレは。
…オレの、限りない愛だ。
「オレは先輩みたいには戦わない。好きな女は、虐めるんじゃなくて守るもんだろ」
そんなキャラじゃないでしょ、君は。
本当は君だってこっち側のくせに。
それでもやっぱり君には。
「エース君には、わかんないよ。オレの気持ちは一生。…だから、エース君はオレには勝てない。
監督生は、絶対にわたすつもりはない。
…話はそれだけ。
あと、このこと口外したら…………」
牽制するように、エース君のいる空間だけ空気を抜く。
息ができなくて、心臓が握りつぶされそうな痛みでしょう?
ひざまづいた彼に、オレは大人気なくいう。
「っ、く、」
「脅しじゃなくて、本気だからね」
これ以上やったら…と、魔法を止める。
こんなの、バレたら即退学かな。
「はぁっはぁっ」
息も絶え絶えの後輩に少しかわいそうなことをしたと、少しだけ慈悲をかけてやる。
「くそったれ、」
監督生ちゃんに相応しいのが、エース君なんて、そんなのあり得ないでしょ。