第9章 8杯目
「あーぁ、流石にちょっと苛めすぎちゃったかも」
顔を真っ赤に染めて、気を失った後輩。
少しだけ反省する。
だけど、
「そういうことだからさ、次は覚悟しといてね 」
サラッと彼女の前髪に触れる。
こんなことでキャパオーバーで意識飛ぶなんて、そんなんでコレから先、どうするのさ。
キスもその先も、君の全部オレのものにしたい。
なかったはずの独占欲が、今更になって出て来るなんて。
「ごめんね、監督生ちゃん」
取り出したのはオレの従順なハートのエース。
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「って、ケイト先輩?どこまでって、」
昼間、後輩を大人気なくよびだしたのは、薔薇の迷路のその奥の煉瓦が積まれて死角になってる場所。
「なんのつもりっすか?」
さすがエース君。察しがいいというか、なんというか。
「それはオレのセリフだよ、エースくん」
「ケイト先輩」
「白い薔薇折ったんだって?」
「…あぁ。そのこと」
嘘つき。
彼女を傷つけない、あんなに棘のない薔薇は、この寮にはない。
「そんなわけないよね、ハートの女王の法律で首を刎ねられちゃう。わざわざ用意して、渡す準備はいつでもできてたんじゃないの?」
「そりゃそーでしょ、まぁ?監督生はわかってなかったけど。…そうだ、アンタにも渡したいものがあったんすよ」
エース君がポケットから出したのは、オレのユニーク魔法で出したものを具現化したもの。
「コレであいつのこと、縛るのは違うでしょ」
「なに?自分のこと差し置いて、オレに説教?後輩としてどうなの?」
「このカードのせいで、オレがあいつを傷つけてるみたいで、胸糞悪いって言ってんの。
せめて違うカードにしろっつーの」
と、それを押し付けられたソレ。
「へぇ、……さすが、白い薔薇を綺麗なまま時を止めて贈った君は違うね。
…エースくん、本当にわかってる?オレたちは、彼女と住む世界が違うんだ」
「なにがいいたいの、先輩は」
頭の回転は速いくせに、こんなこともわからないの?