第2章 1杯目
「先輩は、部活ですか?」
「あぁ」
「サイエンス部って、響きかっこいいですよね」
「お前もやるか?」
「………毎日毎日、授業終わって片付けて、私もう実質サイエンス部なので大丈夫です」
ルーク先輩とトレイ先輩なんて、身の毛がよだつ。
だったら、
「軽音部がいい」
「は?いや、心読まないでくださいよ。読心術でも使えるんですか?」
「否定はしないんだな。ははは」
「トレイ先輩の意地悪。今日という今日は、リドル先輩に言い付けてやるんだから」
「リドルは、寮長の仕事で忙しいんだ。今日も会議って言ってたな」
散々揶揄ったくせに、私で遊ぶ気が済んだのか、散らばった薬品の整理を手伝ってくれる。
「ほら、早くしないと、軽音部行けなくなるぞ」
「それ、みんなの前では言わないでくださいね」
「もう知られてるんじゃないか?意外と監督生はわかりやすいしな」
そんなの困る。
「本人に、バレなきゃいいので。あと、茶化すからマブ達も却下。あと、オクタも却下。黙ってやるから、契約結べっていわれそう。カリム先輩は、アホだから口が滑りそうで却下」
「ははは」
トゲトゲしい言葉を並べながら、片付け終わったのはそれから30分後。
「トレイ先輩、ありがとうございました」
「いや。コレも部活の一環だからな」
「部活…そうだ、ルーク先輩はまだなんですね」
「今日は休みなんだ。忘れ物を取りに来たら、何やらガサゴソ音がしたから覗いたら、監督生がいたんだ」
…そういうとこだ。
「三年生の先輩は、お兄ちゃんしかいない?」
「そうか?」
「しかも、無自覚。助かりました。お礼に、私も先輩のこと何かあったらお手伝いしますね!」
「ふ、…そんなこと、簡単に言ってもいいのか?NRCの生徒に」
「トレイ先輩だからですよ、オクタには口が滑ってもいいません」
そういうと、またポンポンと頭を撫でられる。
「じゃあまた、試作のケーキの味見の手伝いでもしてもらおうか」
ほら、そういうとこだ。
"ダメ人間製造機"
「なんだ?」
「いいや、なんでもないです。お兄ちゃんに、甘やかされまくって困るって話です」
「なら、厳しくしようか?」
「…今のままでいいです」