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オニオンスープ

第9章 8杯目


 などと言ってると、いつの間にかついた食堂。

 エースの言っていた通り、デュースとグリムが席を取ってくれていた。

 「ありがとう2人とも」
 「オレツナ缶定食が食いたいんだゾ!あとデラックスのヤツ」
 「別に構わないぞ。それよりグリムをなんとかしてくれ、さっきからコレじゃ敵わないよ」
 「あはは。ごめん、ごめん。待っててね、グリム」

 財布の紐を握っているのは私。
 グリムと自分の昼食を買いに立つ。

 「エースは?」
 「オレはデュースに頼んでたから」
 「そう?」

 そう言って3人から一度離れる。

 昼食を買うための列に並ぼうとしたとき、フワッと香ったのは私の好きな匂い。

 「ケイト先輩」

 無意識的に出た名前。

 「監督生ちゃんじゃん。お昼買いにきたの?」
 「はい!」
 「そっかそっか、エーデュースちゃん達は?」
 「場所取っててくれてます」
 「ふーん。じゃあ、今1人?」
 「ですね、…先輩?ちょっと近いっ」
 「オレもね、今1人なんだ。リドル君達もうすぐで来ちゃうけど」

 そう言ってニコッと八重歯を見せると、ハグでもされるんじゃないかって思うくらいグッと距離が近づいて。

 また、先輩の髪が首を触る。

 「残念、オレがあげたのつけてくれるの期待してたんだけどな」

 と私の耳もとで小さな声で囁いた。

 「っ」

 クスクスっと鈴を鳴らすように笑った先輩。

 「耳弱いよね?」

 もう、誰か助けてくれ。

 グイッと腕を引かれる。

 「やっぱり着いてけばよかった」

 ケイト先輩から私を隠すように立ったのは、エース。

 「先輩、食堂ではダメでしょ」
 「なに?牽制?」
 「コイツ、限界そうなんで辞めてもらえません?」

 触発しそうな雰囲気の中、凛とした声が響く。

 「何してるんだい、ケイト、エース」

 リドル先輩だ。

 「いやー、ちょっとね!一年生可愛いなって思って」

 それに戯けて返す先輩。

 それだけで毎回あんなことされたら、心臓がもたない。
 それから、さっきのはちょっと、ケイト先輩が怖かった。

 きゅっと、目の前のエースの服を掴んだのは、不可抗力だ。

 振り向いたエースと目が合う。
 なんかごめん。

 「ほどほどにね、ケイト」
 「わかってるって。じゃあね、2人とも。行こ?リドルくん」
 
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