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オニオンスープ

第8章 7杯目


 『7.5話』

 「ケイトも一緒だったのか、ありがとな。2人とも」

 ハーツラビュル寮に着いて、お互いに手を離して。
 だけど、強引にでもそのまま繋いで置いて、彼女に白い薔薇を送った後輩に牽制でもすればよかったかと、少しだけオレの悪い部分が出る。

 オレだって、立派なNRC生だし。
 なんて、らしくないか。

 「たまたま会って、それにしたってトレイくんこの量はわざとでしょ」

 彼女から目を離さずに、トレイ君に返事をする。

 あの子はオレが渡した軽い方の荷物を取り出して、すっかり慣れたように補充していく。
 他寮のくせに、ほんと、手際がいい。

 「お前が、放課後職員室に呼ばれたの見てたからな。ちょうど会うんじゃないかと思ったんだ。監督生もデュースに会えそうって言ってたし」

 トレイ君も同じように思ってるに違いない。

 「そういうところあるよね、トレイ君って」

 呆れたようにオレが言えば、トレイ君が同じように呆れたような視線をオレに向ける。

 「でも、仲直りできてよかったじゃないか」
 「だから、喧嘩してないって」
 「そうだな、ケイトが勝手に嫉妬して、らしくなく八つ当たりしてただけだもんな」
 「言い方、ってか、監督生ちゃんに聞こえたらどうしてくれるの?」
 「良いんじゃないか、お互いに思い合ってるんだし」
 「コレだからトレイ君は。だから洗い立ての布巾だの、干し葡萄だの見当違いのこといって、女の子にビンタされちゃうんだよ」

 こう言うのは徹底的に、もっと深くオレだけをみてもらえるように。

 監督生ちゃんがいつか元の世界に帰ってしまって、この世界のこと全てわからなくなったとしても。

 オレだけが傷になってふかく、深く、深く、そして何より重い枷になってその中に残って仕舞えば良いと。

 いくら何でもそんなこと、トレイ君にだって言えはしないけど。

 オレだけを生涯好きでいてくれるように…なーんて、案外欲深いオレは思っている。

 「ところでさ、エース君は?」
 「ハリネズミ、探しに。他の一年が逃したらしくて、駆り出された。安心しろ、グリムは手伝いで疲れてそこで寝てる。監督生もこっちで引き留めて置くし、…けどまぁ、ほどほどにな」
 「全部見透かしてるってわけね?」
 「エースから話少し聞いたし、お前の顔見ればな」
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