第8章 7杯目
言った後に、はっと我に帰る。
そして、ケイト先輩を押す。
「監督生ちゃん?」
「…ほんもの?」
「ははっ、本物だよ。本物の、ケイト・ダイヤモンドだよ」
先輩が悲しそうに笑う。
そんな顔、させたいんじゃないのに。
「と、とにかく。クレームは以上です、」
「わかった…気をつけるよ。監督生ちゃんを泣かせたかったわけじゃないしね」
「ケイト先輩」
「なに?」
「荷物、運ぶの手伝ってください」
「そのつもりだけど、」
「あと、」
「ん?」
「それ終わったら、またさっきみたいにぎゅってしてほしい…デス」
自分で離したくせに、温もりが恋しいなんて。
「ふ、……照れるなら言わなきゃいいのに。まったく、可愛いんだから」
「っ、」
「いいよ、じゃあ。トレイくんのケーキ食べたら、オレの部屋くる?」
ぶわぁっと、体温が上がる。
「い、い、いんですか?」
「うん、トクベツね」
ケイト先輩がヒュルっと魔法をかけて、散らばった荷物の袋を二つに再形成すると、その中にお行儀よく中身が入る。
軽いものだけが入ったその袋を私に差し出してくる先輩。
「こっち、持ってくれる?」
自分は重いのばかり入った袋と、破れなかった方の袋を涼しそうな顔をしながら持って。
とりあえず差し出された方をうけとりつつ、もう一方にも手を出す。
「私もっと持てます、」
「いいよ、もっと重いの持ってもらうし」
よいしょっと、二つの荷物を左手に持ち直した先輩が右手を差し出して、そっと私の左手を取った。
「これでオッケー。帰ろっか」
不服に思いながらも先輩に手を引かれる。
もっと重い荷物って何?
と、ガサガサなる右手に持った袋を見ながら思った。
「せんぱい、」
「なぁに?」
「ユニーク魔法も使って、この間探してくれてありがとうございました。って、ずっとお礼言えてなかったので」
夕陽が傾いて、辺りが先輩の色になる。
「うん、どういたしまして」
「次は、1番に見つけてくださいね」
なんて、わがままだろうか。
「その前に、迷子にならないでよ。心配だから」
「う…ごめんなさい」
「困ったら自分で行動する前に、オレに1番に相談して、絶対何とかするから…伊達に君より長く生きてるわけじゃないからさ」