第8章 7杯目
「こんにちは、サムさん」
いつものようにハイテンションで、なんかかっこいい英語?で、出迎えられる。
今日は何をお求めだい?って聞かれたから、トレイ先輩のメモを渡す。
それにしても、高校生男子にしては可愛いメモ帳使ってるな。
今更だけど。
クローバーが書かれた、少しメルヘンな紙を見ながら思った。
「小鬼ちゃんが、全部運ぶのかい?」
「まぁ」
「oh〜」
すごく哀れまれた。
「だ、大丈夫ですよ!私、力持ちなんで」
と、試しに用意してくれたそれを持ってみる。
トレイの野郎(先輩だけど)、ここぞとばかりにコメとか牛乳とか、瓶詰とか、缶詰とか重いのばっかり頼みやがって。
私女子ですけど!!
何とかもてたけど、冷や汗がたらりと流れる。
「ほ、ほら」
「気をつけてね、小鬼ちゃん」
大荷物のせいで、前が見えないけど。
サムさんがドアを開けてくれたから、何とか出れた。
今からでも誰か召喚するべき?
デュースも歩いてないし…
爽やかな顔で、重い荷物を持つ時のコツがあるんだと言って可愛く笑ってたデュースのことを思い出す。
きっとデュースのママも今日みたいな買い物帰りに、愛息子を想ってほろりと来ているに違いない。
今の私みたいに。
荷物のせいで、子鹿のように足がガクガクしている。
こんなに重いの、持った事ないんですけど。
持った事ないわけじゃないけど、流石にこの距離は…
ぼすっとなにかにぶつかる。
どうか壁か、ジャックでありますように。
くるーえる先生でもいい、ちゃんとクルーウェル先生って呼ぶから、その3択にしてください。
ちなみに何でその3択かと言うと、壁はともかくとして、NRCで見返りを求めず、紳士に対応してくれつつ、かくなる上は、荷物を一緒に運んでくれそうだからです。
などと、秒速で考えた時、すっと手元から荷物がなくなった。
「なにしてんの、監督生ちゃん」
…それは、こっちのセリフだ。
「けい…」
袋の間から緑の目とあったから、わたしは思わず逸らしてしまった。
「とれいせんぱいから、たのまれて」
「こんなにいっぱい?まったく、ひどい男だね、アイツも。ハーツラビュルでいいんでしょ?ここからは、オレが持つよ!一緒に行こ、監督生ちゃん」