第8章 7杯目
「エースと監督生おそいんだゾ」
「ごめん、グリム」
「エースに監督生ふたりだけか?」
「トレイ先輩、デュースならジャックに呼ばれて、もうすぐ来るんじゃないですか?」
「そうか、なら、足りない分はデュースに頼むか」
と、顎を触るトレイ先輩。
「どうしたんですか?」
げーっとしたエースに、私は首を傾げる。
「仕上げの粉砂糖がなくなってしまってな」
「それなら私買って来ますよ」
「悪いな、頼めるか?」
「はいっ」
「それならついでに、牛乳と卵と、それから…今からメモするから待っててくれ」
さっきのエースの顔の意味がわかった。
まぁ、いい。
トレイ先輩にはいつもお世話になってるし。
「これ、お願いな」
「あ、はい」
受け取ったものの、私こんなに持てるかな。
「寮生の誰か連れてってもいいぞ」
チラッとエースを見ると、ばっと目を逸らされた。
でもここには、エースとトレイ先輩とグリムしかいないし。
寮生って、ここに他に存在しないじゃないか。
「…行って来ます」
薄情だ、エースのくせに。
「いいのか、エース連れてかなくて」
「嫌みたいなんで、それに、さっき愚痴聞かせちゃったし。無理強いできないし、多分途中でデュースに会うからそしたら持ってもらえますし、多分。だから、大丈夫です。トレイ先輩のケーキっていうご褒美もあるし」
そういうと、頭をポンポンとされた。
「ありがとう、監督生」
そういって、眼鏡越しに微笑まれて、クソかっこいい先輩だとおもいました、まる
と、その笑顔に一瞬IQが下がりながらも、さっき到着したばかりの寮の調理場を出る。
さっきから、寮しかいってないけど、ハーツラタン寮の名前が言いにくいからってわけではない。
ハーツラタンでもない気がする。
なんか凄い陰気な感じの寮名になってしまった。
でも、らびる?らびゅる?は言いにくいと思う。
何でみんな言えるんだろう。こっそり練習でもしてんのか?
凄いな。
なんて思いながら、サムさんのいる購買に向かう。