第8章 7杯目
『7杯目』
手のひらにあるのは、昨日ラギー先輩に拾ってもらったハートのエース。
「何、トランプなんて見つめてどーしたの」
放課後、珍しく部活も居残りもない今日。
ボケーっとトランプを見つめてると、帰り支度を終えたエースが話しかけてくる。
デュースはジャックに呼ばれてどこかに行ってしまい、グリムは一足先にトレイ先輩に餌付けされに行った。
うちの子は待てができないらしい。かわいい。
ちなみに私もお呼ばれしている。
「ハートのエース?…なに、オレのカードじゃんソレ」
「やっぱりコレ、エースのなの?」
「いや、模様の話」
「…だよね、ラギー先輩も言ってたし。エースだったら明日の朝日拝めないようにしてやるところだった」
「何でお前は、オレに当たりつよいわけ?」
「好きな子に意地悪するそれだよ」
と、適当に返す。
「ミドルスクール男子か!」
「エースもした事ある?」
「…、ばーか、お前になんて教えねぇよ」
「…………ふーん。まぁ、でもエースは、カッコつけでおませさんだからな。
意外と、いじめられてる好きな子を庇いつつ、
『好きな女は、虐めるんじゃなくて守るもんだろ』
とか言って、一躍クラスの女子みんなから好かれるタイプそう」
「お前の中のオレ、いったいどんなやつだよ」
でもな、初対面で意地悪言ってきたし、やっぱり好きな子にも意地悪しそうなタイプかもしんない。
ゴスマリの時は、いい感じのプロポーズしてたけど。
「エース、」
「ん?」
「ケイト先輩のさ、話してもいい?」
「お前いつもそれじゃん。聞いてやってもいいけど、深刻なやつ?」
深刻…どうだろう。
少し間を置いて話す。
「ケイト先輩って、カード使って分身するじゃん」
「うん?」
「そしたら、54人までならケイト先輩出せるって事だよね」
「はい?」
「このカードなかったらさ、ケイト先輩53人しか出せなくなっちゃうよね」
「………何の話?」
「返さなきゃダメだよねぇ…」
「なぁ、」
「なに?」
「ケイト先輩、別にトランプ使って分身するわけじゃねーよな」
今度は私がキョトンとする番。
「分身したケイト先輩が消えると、カードになるだけだろ」
「どう違うの?」
「しらねぇよ。ケイト先輩に聞けって」
「…」