第7章 6杯目
夜食を3人で食べた後、レオナ先輩はまた眠りについて。
食べて寝るの生活なのに、どうしてあんなにスタイル良いんだろう。
羨ましい。
「でも、元気になってくれて良かったっす」
羨ましいと思いつつラギー先輩が洗ったものを拭いてると、そんな声が聞こえて。
横を見れば、先輩のくりくりした目。
「へ?」
面倒見の良い先輩だとは思ってたけど…。
「そんなに目に見えて元気じゃなかったですか?」
「そりゃ、いつも脳天気な君があんな顔してたら流石にね」
能天気は余計だ。
「さっきのは、エースくんの仕業じゃないっすよ」
手を拭きながら言った先輩に眉を寄せる。
「どうしてラギー先輩がわかるんですか」
「アンタよりここが効くんす」
と、鼻を指差してニコッと笑う。
「さ。オンボロ寮まで送ってやるっすから、百面相とっととやめな?」
「送ってくれるんですか?」
「ま、誘ったのはオレだからね」
「貸し、ですか?」
「…貸しにしていいんすか?」
「だめです」
「でしょ、今日はサービスっす」
周りにレオナ先輩やジャックがいると小柄に見えるのに、隣に並ぶと改めて大きく感じる先輩は、身を屈めて私と目を合わせる。
一歩間違えたら喰われてしまうんじゃないかと思うくらい、距離を縮めたかと思えばまたゆっくりと離れる。
「タダ働きは嫌いだけど、掃除も手伝ってくれたし、監督生くんはオレの大事な後輩の1人だからね」
そう言ったラギー先輩の表情は、今まで見た中で1番優しいものだった。
「ラギー先輩って、お兄ちゃんみたい」
「ふ、…アンタみたいな手のかかる妹は嫌っすね〜」
「む、」
「それに、トレイさんにもおんなじ事言ってるの、知ってるっすよ」
「NRCはお兄ちゃん属性の倉庫だと思ってるので」
「訳のわからない事言ってないで、早く行くっす」
「ラギー先輩、走るのだけはやめて下さいね?」
「えー、足治ったんだよね?少しくらい」
「嫌です!心臓がまほろびでます!走るくらいなら、箒を所望させていただきたい所存です!」
ビシッと敬礼を捧げれば、調子に乗るなと怒られた。
折衷案で結局歩いて行くことにしたけど、最初からそれでよかったんじゃないだろうか。
…オンボロ寮の前につくと先輩は言った。
「箒はまた今度ね」