第7章 6杯目
さっきまで痛かった足が、何も感じない。
「医者?」
「これくらいできて当たり前だ」
そう言って寝返りを打つと、くぁあっとあくびをした先輩。
「レオナ先輩!さすが!ありがとうございます!!足痛くない!!すごい!!」
かけよると、ぺしんと尻尾で払われる。
「うっ」
「鬱陶しい」
そう言いつつも、たらんと垂れた尻尾がゆらゆらと揺れている
…仕方ない、掃除くらいしてあげるか。
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ーーー
ー
「おい、枕」
「枕じゃないですけど」
「掃除終わったなら、枕になれ」
「横暴すぎません?」
「…」
ラギー先輩は、まだ来ない。
「仕方ないですね」
背中を向けて寝ている先輩の腰の近くに座ると、ギシッとベッドが歪み、そして…
「わっ」
むぎゅーっと抱きしめられる。
どうなってこうなったかは、わからない。
後ろから手が回ってきたと思った瞬間、ベッドに横になっている私がいた。
………先輩、めっちゃ良い匂いすんな。
大人の色気むんむんだな。
てか、モッフモフなの耳と尻尾だけなんだな。
などと、現実逃避をしつつ今の状況を整理する。
枕ってそっち?
抱き枕の方?
先輩足かけんのやめて。
先輩、尻尾のふさふさめっちゃくちゃ痒いんだけど。
喉をゴロゴロしながら、目を伏せている先輩。
巨大猫。
まつ毛長っ!髪質ふわっふわ!
…傷、痛そう。
分析をしていると、先輩の耳がピクッと動く。
「何してるんすか?」
「らぎーせんぱ!」
もごっ、
「らぎー、タイミングが悪い」
「飯持ってきたんすけど。邪魔ならまた後でにします?」
ぐいっ
「ぷはっ、いや!邪魔じゃないです!ラギー先輩助けて!
レオナ先輩の色気でのぼせそうなんですけど、てか腕強すぎ!
折れます!」
「…しょうがないっすね。レオナさん、そこまでにしてあげてくださいよ。飯できたんで。それともオレが全部食っちまってもいいですか?」
「勝手にしろ」
「監督生くん、あきらめてください」
「いや!よくないから!諦めないから!お腹すいた!レオナ先輩のこと今だけ大っ嫌いになりますからね?!
今度から、猫先輩ってよびますよ?!」
「ち、」
離れた腕に、乱れた服を直す。