第7章 6杯目
真剣なその目も、
「オレのことだけ、見てれば良いんだよ」
腕に伝わる熱も、
「難しいことなんて言ってない、簡単でしょ?」
それが私に向けられたものだなんて。
髪から手が離れた時少し距離ができて、
また目があって。
勢いよく引かれた腕で、
抱きしめられるのかなって、どこか冷静に思ってる私がいる。
体が傾き始めた時、
景色が変わる。
「Laugh with me!!」
そんな詠唱が聞こえて。
…夢が覚めた。
このままでは転ぶところだったと、ハラリと落ちたカードをうらんだ。
ほら、…やっぱり嘘つき。
「全く!危なっかしいっす、監督生くん」
「…」
意地悪なんだ。
先輩のカードは…。
「大丈夫?」
ハイエナの獣人である先輩の方腕には、色々と食材が入った紙袋。
もう一方の手で、私を支えてくれた。
「…監督生くん?」
「ラギー先輩、ありがとうございます」
「礼なら、食い物かマドルがいいっス。しししっ」
私が体勢を整えると、支えられていた体からその手が離れる。
耳がピコって揺れた。
「監督生くん、それ」
足元に落ちたトランプを、私の代わりに拾い上げたのはラギー先輩。
「ハートのA、これ拾おうとして転んだんすか?」
その模様を思い出して、マブの仕業かとむすっとする。
私に対してあんなこと、ケイト先輩は言わない。
「タチの悪い悪戯ですね」
ラギー先輩が、驚いて。
一方の私は、今すぐにでも寮に戻ってやけ食いして、ふて寝したい気分に駆られる。
「ケイト先輩かと思ったけど、エースの方だったとは」
ボソッと呟くと、
こてんと首をかしげた先輩。
「あんなやつ、絶交してやる」
クルーウェル先生のサボったからあてつけってこと?
エース、マジックも得意だし。
どんなタネ使ったんだろう。
…というか、魔法の類い?
「あー………ふーん、なるほど」
「何がなるほどなんです?」
「これ、エース君の悪戯だと思ってる?」
「それ以外ないですよね?」
ムスッとして言うと、面倒なことに巻き込まれたと言うような表情をする、ラギー先輩。