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オニオンスープ

第7章 6杯目


 『6杯目』

 ラウンジをでて鏡を通り鏡舎に戻ると、たった今出たその鏡の隣に誰かいるのに気づく。

 「っ、!!」

 体育座りのように足を立て、
 壁にもたれて俯いてるから、普段見えないつむじが見える。

 こんなところでどうしたんだろう?

 声をかけるべきかいなか、迷う。

 わざわざ他寮の前で、こんな格好普通するだろうか?

 放課後で部活も終わってみんな寮に帰っていたとしても、こんな人目の着くところにわざわざ。

 オクタの誰かに用とか?
 …それとも具合、悪くなったとか?

 嫌な意味で、ドキッとする。

 だってもしかして、

 お昼のあの少し冷たい態度が、具合が悪かったからなのだとしたら?

 って思ったら居ても立っても居られなくなって。
 私はあの時、ちょっと冷たい言い方にばかり気を取られて、先輩の不調に気づかなかった。

 不覚すぎる!

 だけど、先輩隠すの上手いし。

 そんなことより私1人で、ケイト先輩運ぶのなんて無理だ。
 …誰か、呼んでこないといけないよね??

 あぁどうしよう、

 「けい、」

 ケイト先輩にとりあえず声をかけようとすると、その体に触れる前にグイッと掴まれた。

 「監督生、」

 ゆっくりと先輩の顔があがって、…
 そのうちに、先輩のリーフグリーンの瞳が私を捕らえる。

 鼓膜を揺らす、その声に私は身を固める。

 「今度は、フロイド君達と浮気?」
 「っ、」
 「昨日はシルバー君、だったよね」

 聞いたことない、先輩の地を這うような声。

 「あの、」

 先輩は私の腕をつかんだまま立ち上がり、表情を緩める。

 「あーぁ、誰かに取られるくらいなら、キミのことどこかに閉じ込めちゃえばよかったかな」

 掴んでない方の手で私の髪に触れて、

 「なんてね、」

 って、切なく言うから。

 「…うそつき」

 と、小さくつぶやく。

 黄昏時に夢でもみてるのか。
 …私にとって、都合のいい夢を。

 「オレの、どこが嘘つきっていうの?」
 「それは、」
 「それは君の方じゃなくて?
 オレは、さ…嫌なんだよね、もう。ずっと、譲ってきたからさ」
 「…」
 「オレだけを見てくれる"監督生だから"、いいなって思ってたのに。
 …その目に映すのがオレ以外なんてこと、あって良いわけないでしょ」
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