第6章 5杯目
ふいっとそらした顔。
サラッとした、先輩の髪。
「ありがとうございます」
さっと、手を伸ばすとビクッと肩が揺れた。
でも、拒まれないみたいだ。
「でも、今日のは私が悪いんです。
相手にされてないこと、気づいてたのに…いざってなったら悲しくなっちゃって」
パフェに乗ってたバニラアイスが、少し溶けてしまっている。
「でも、先輩のおかげで元気出ました。この、パフェのおかげ。
落ち込み過ぎる前に守ってくれて、ありがとうございます」
優しく撫でていると、またきゅっきゅっと、感覚を置いて喉を鳴らしている。
でも、相変わらず向こうを向いたままで、こっちを見てくれない。
「せんぱい?」
どうしたもんかと尋ねてみると、ばっと勢いよく立ち上がるとぎゅーっと私を抱きしめた後、ビシッと指を刺してくる。
「早く、そのパフェ食べちゃって!俺っ、トイレ行ってくるから!わかった?!」
「あ、はい」
バタバタと出ていった彼に、一体どうしたんだと首を傾げつつ、パフェを口に運ぶ。
後半分、食べ終わる頃には戻ってくるのかな…。
と、誰もいないラウンジの厨房で、スプーンをすすめる。
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味わって食べて容器が空になっても、先輩が戻ってくることはなかった。
名残惜しくおもいつつ、スプーンと容器を洗う。
フロイド先輩どうしたんだろう、メールも既読、つかないし。
声かけて行きたかったんだけど、寮に顔出すまでもない…か?
それにフロイド先輩気まぐれなところがあるから、戻ってこなくても仕方ないっていうか、とりあえず次会った時にでもまた改めてパフェのお礼でもしようか。
と、厨房を出て考えているとジェイド先輩の姿。
「おや、監督生さん?」
「ジェイド先輩!」
「ラウンジに何か御用でしたか?」
「いいえ、フロイド先輩に新メニューの試食をさせてもらって。
途中で帰っちゃったから、お礼もちゃんとできなくて」
「おやおや、そうでしたか。フロイドがすみません」