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オニオンスープ

第6章 5杯目


 「うん………って、先輩も海のギャングって呼ばれてるでしょう?」
 「そうだけど!俺たち、小エビは食べないから」
 「へぇ、え?肉食?じゃないんですか?」
 「肉食だよ。よく食うのは、タコとか」

 歯切れの悪い先輩に、話題を変えた方がいいのかと思いながら、普段のオクタの3人を思い出して、クスッときた。

 「そういえば、二匹のウツボさんに囲まれて、アズール先輩大変ですね」
 「…そーそー、だから、喧嘩するときは目の前でタコの刺身とかたこ焼き食ってやるんだぁ」
 「アズール先輩かわいそう、でも、なんか嫌がらせの仕方が可愛いですね」
 「でも、アズールも仕返しでウツボ料理、目の前で食べてくるんだよな。趣味悪りぃ」
 「ウツボって食べられるんですか?」
 「そーだよ。…って、小エビちゃん食おうとしてる?」
 「機会があれば?」
 「こえー。これだから人間は」

 うげーってする先輩に、こんなふうに普通の話?で、盛り上がれるなんて、何だか少し嬉しい。

 いつもは怖いが勝ってたのに。

 「ふふっ」
 「うっ、…あのさ、」
 「はい?」
 「ウツボにとって、小エビは特別だから、」
 「…?」

 言葉を選ぶみたいにしてたくせに、私に視線を止めるとにかって笑った。

 「掃除してくれんの。だから、俺たち代わりに守ってやってるんだ」
 「掃除?」
 「うん。食べ終わったあととか、こっちで言う歯磨き代わり。
 口に入れても可愛い存在ってこと」
 「ふは。それ、小エビって言ってる私に言うの、なんか狂気的じゃないですか?」
 「ウツボ食おうとしてるやつが言うなよ。…けど、俺がモヤモヤしてる時、小エビちゃんに会うと不思議となくなるんだぁ。だから、嫌な気持ちを掃除してくれてるみてぇだなって、」
 「…そうですかね?」
 「うん、だから、守ってあげる。俺が」
 「へ?」
 「なんだよ、不満?」

 自分の黒い部分の髪をいじりながら、尋ねてくる。

 「何から、守ってくれるんです?」
 「天敵、とか?」

 天敵…?

 「今日のお昼、食堂で見たよ」
 「それは、それは…お見苦しいものを」
 「ハナダイくんといたら、いつか食われちまうんじゃねぇの?」

 いつもは視線の上にいる先輩の頭が、ずいぶん近くにある。

 「心配してくれたんですか?」
 
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