第6章 5杯目
「おぉ、すごい」
乗っているときの、フロイド先輩はすごい。
綺麗な色のパフェをつくると、コトッと私の前に置いた。
「海みたいな色のゼリーのってて、かわいい」
「でしょー」
「綺麗、…あ。先輩?」
「なぁに?」
長い足をうまく折り曲げ、少し小さめの椅子に腰掛けると、私の顔を覗き込むようにみる。
「さっき私が見てたお魚いたじゃないですか、綺麗な赤いお魚」
「あぁ、あれは…」
遠い目をした後に、私を見て少し考えた後に言う。
「"ハナダイ"って言うんだよ。」
「…フロイド先輩、ケイト先輩のことハナダイって呼んでるのはあの子からとったの?」
「まぁ」
…そっか。
「そんなことよりさぁ、俺がせっかく作ってやったんだから、早く食えよーぉ」
「はーい。頂きます」
パクっと一口入れると、優しい味が広がる。
「どぉ?」
「ぜりーもアイスも果物も全部美味しい。バランスもよくて、フロイド先輩らしい、やさしくて楽しい味がします!」
というと、頭を抱えたフロイド先輩。
「優しいとか楽しいは、味じゃないでしょ」
…確かに。
「紅茶ですか?」
「正解。バタフライピーって言う紅茶使って、ゼリー作ってんの。それからこれは…」
パフェの説明をしながら、ニコニコしてる。
こんなに先輩が機嫌いいのも、珍しい気がする。
だから、私も釣られて笑う。
すると、優しい目をして聞いてくる。
「…元気、でた?」
なんのことか一瞬分からなくて、瞬きをした後に先輩が励まそうとしてくれていたことに気付いた。
「ねぇねぇ、小エビちゃん。さっきのハナダイ、主食はなんだと思う?」
ありがとうございますと、伝えようとした次の瞬間には、言わせまいと言う具合に、もう話題が変わっている。
「甲殻類、多毛類、軟体動物。綺麗だけど、あいつら肉食だから」
甲殻類、多毛類、軟体動物…。