第5章 4杯目
「って、探してくれてたんですか?!」
みんなの顔を見ると、当たり前だろ?と書いてある…ような気がする。
はーつらびる寮の皆さん、優しすぎん?
我ながら、ちょろい。
あぁ、そうだと言葉を続けたトレイ先輩。
「もちろんケイトも、ユニーク魔法を使っていたしな」
目配せをしたトレイ先輩の前にひょこっと出て、私の顔を覗き見た後、
「まぁね。なんてったって、うちの学園の紅一点のピンチだし」
笑いつつも、少し怒ってるのかなんとなく冷たさを孕んだケイト先輩の声。
「な…」
「いやー、隅に置けないよね、シルバー君も」
「ケイト先輩?」
「学園唯一の女の子を、"お姫様抱っこ"なんて」
私、終了のお知らせ。
「ケイト、言わない約束だったろ。それは」
「ごめんごめん、エースちゃんのことだけ言ったら、フェアじゃないかと思って」
その言葉に、全力白旗。
「あー、………。えーっと、ケイト先輩も知ってたんすね?」
エースのバカ。掘り下げんでいい!
「っていうより、見ちゃったんだよね。オレくんが」
「ケイト、揶揄うのはおよし。エースもトレイも、やりすぎは良くない」
「はい、寮長ー」
「すまない、監督生」
本当の意味で動けなくなる。
あの場に、来てくれてたの?
…ケイト先輩が?
ケイト先輩の分身でもいいから、ケイト先輩に助けてもらいたかったなんて言ったら、シルバー先輩には失礼だけど。
見られて困るようなこと、したっけ?
「あ…」
さぁっと、血の気が引いてくのがわかる。
"首につかまれ"
シルバー先輩に言われるがままに、ぎゅっと抱きついたのは私だ。
蔑むような目、
冷たい、温度がない目。
見たことがないそんな表情に、例えばこれが見せられた写真の一部なら、初めての表情だ!と喜んで目に焼き付けたかも知れない。
これが、カメラ越しじゃなくてあろうことか、自分に向けられたものならば…。
フワッと髪が揺れる。
大好きなオレンジがゆっくりと離れる。
「でもさ、シルバーくんと"監督生"ちゃんなら、お似合いだと思わない?写真撮りたかった〜っ」
私が視線を落とすのと、リドル先輩が声を上げるのは多分同時だった。
首に付けられた枷が重いせいか、しばらく顔を上げられなかった。