第5章 4杯目
待ってずるくない?隣はずるくない?
ケイト先輩の隣に立っていいのは、副寮長のトレイ先輩と軽音部の皆さんだけだからね?
ちなみに前に立っていいのは、リドル先輩だけです。
ケイト先輩の半径1メートル以内に入るのは、服務規定違反です!!
…脳内でエースを裁判にかける。
「聞いてくださいよー、ケイト先輩。こいつ昨日ね」
私を揶揄うように、耳打ちする体制をとる。
「なになに、エースちゃん?」
あの!
あのケイト先輩が!!
首を!!
首を傾げてらっしゃる!!
そりゃそうだよね?!6センチくらいちがうもんね??
そんで、ふわさらって!
エースの手にシャララって!
その一房の髪がかかってる!!!!!
………っていうか、待って。
さっきエース、なんて言った?
『こいつ昨日』
…私の昨日?
思い出して、さあっと血の気がひく。
エース、コラ。
極刑だぞ、コラ。
ぎったんぎたんだかんな、コラ。
血の気が引いて、一周回って取り敢えずどうやって、コイツの口を塞いでやろうかと考えていると、私の前にサッと立ったのはトレイ先輩こと、お義兄ちゃん。
「エース、そこまでだ」
その言葉に、渋々離れたエース。
無駄にならなくてよかったな、コッペパン。
命拾いしたな、私の空腹。
「ハーイ。トレイ先輩は、監督生に甘いもんなー。いい加減オレにも優しくしてほしーね!」
「俺はいつも優しく平等にしてるつもりだが?」
「えぇー?」
「それから、監督生。電話だけじゃないぞ?」
振り向いて、困ったように笑ったトレイ先輩に首を傾ける。
「昨日はお前の姿が見えないし、連絡も取れないって慌てたエースに言われて、一生懸命探したんだぞ?
…まぁ、シルバーに途中であって、お前の無事を確認して捜索をやめたんだがな」
という、トレイ先輩に罰の悪そうなエース。
「な、それは言わない約束でしょ!トレイ先輩!!」
「そうだぞ、監督生。エースとクローバー先輩だけじゃなくて、ローズハート寮長もダイヤモンド先輩も、俺もだいぶ探してたんだぞ?って、昨日話さなかったか?」
デュースまで、そんなことを言い出す。