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オニオンスープ

第3章 2杯目


 「…せっかく紙飛行機、上手く折れたのに」

 不覚にもキュンっとしてしまった。

 「ふっ、」
 「小エビのくせに」
 「紙飛行機は、また折ればいいじゃないですか。壊しちゃったテラリウムは、ごめんなさいしましょう?キノコはともかくとして」

 ガクッと項垂れたあと、ガシガシと頭をかいたフロイド先輩は、
勢いよく立ち上がり、私はそのせいで尻もちをつく。

 「なにしてんの」
 「先輩が急に立ったんですよね?」
 「…ゴメン」

 しゅんと眉毛が下がって、差し出される手。
 身長も大きいからか、掌も大きい。

 「ジェイドに、謝ってくる」
 「はいっ」
 「その笑顔腹立つんだけど」
 「はい」
 「わかってんの?」

 ムギーッと捕まれたほっぺ。
 地味に痛いな。

 「ブサっ」
 「やんのか、ウツボ先輩?!」
 「あぁん?何、小エビちゃんオレに喧嘩うるの?」
 「怪我してもいいなら、」
 「だれが?」
 「主に私が」
 「何番煎じ?」
 「いや、知りませんけど。機嫌治ったんなら良いです。
 謝る前に、腹拵えしてったらどうです?小エビ特製激うまコンソメスープあるんですけど」

 パカっと鍋蓋を開ける。

 「マジでスープしか入ってないじゃん。小エビちゃんどんだけ貧乏なの?」
 「なっ」
 「ま、いいや。いただきまーす!」
 「いや、鍋ごと?熱くない?!」
 「冗談に決まってんだろ」

 本当この先輩どうにかしてくれ。

 「ん」

 ウツボが書いてある先輩のお気に入りマグカップを差し出され、オタマで二杯すくってよそう。
 いただきますも言わずに飲み始めた先輩は、意外にも猫舌ではないらしい。

 「………」
 「どうですか?」
 「…おかわり」
 「はぁ」

 もう一杯同じようによそう。

 「ぐびぐび」

ーーーー
ーーー

 …というのを何回か繰り返したあと、

 「せんぱい、なくなっちゃうんですけど」
 そう言うと、満族そうに笑った先輩。

 「うまぁっ」
 「え、時差?」
 「美味かったよ、小エビちゃん。やるじゃん」
 「そうですか、」
 「また作ってくれる?」
 「まぁ、良いですけど…」
 
 ぎゅーーーーっ

 「くるじっぃ、」

 急に締めてきよる。
 かと思えば解かれた腕。

 「ジェイドんとこと、アズールんとこに行ってくる。ありがと、小エビちゃんっ」
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