第3章 2杯目
「こーやって、おるんだけどぉ」
丁寧に折り目が付いたそれは、どうやらアズール先輩が探していたもの。
「これを何処で?」
「アズールの机にいっぱい紙あったから、必要ねぇかと思ってぇ」
ゴスンっと重い一髪を決められたフロイド先輩。
しゃがみ込んで動かなくなってしまった。
アズール先輩はその紙をひったくり、こちらに目も向けず、扉から出て行った。
「おやおや」
「いや、ジェイドせんぱい?!おやおやじゃないでしょう?!大丈夫ですか?!フロイド先輩!」
「痛ってぇ…ジェイドてめぇ」
支えてあげようとすると、必要ないと振り解かれる。
え、なに。
おやおやといいながら凄んでるジェイド先輩と、ひさしぶりに本気モードのフロイド先輩。
兄弟喧嘩しちゃうの?ここで?
「オレが紙飛行機折るって言った時、アズールの机の紙、処分するから使っていいって言ったよな?」
「ええ。ですから、(アズールが確認した後になら)使っていいのではと、申し上げたまでです。考えればわかることでしょう。
17にもなったんだから」
「オレが昨日壊したテラリウム、まだ根に持ってんだろ?!」
「それだけじゃありませんよ、貴重なキノコ達を処分した貴方に制裁を…ごほん。
僕は、提案して差し上げただけのこと。それに乗ったのはあなた自身の責任でしょう」
くくくっと笑っているジェイド先輩に、悔しがってるフロイド先輩。
この兄弟見た目のいかつさ半端ないのに、喧嘩の内容がすっごく子供だ。
「ジェイド!急いで手伝え!」
廊下から聞こえて、フロイド先輩が思い切り舌打ちをしている。
「おやおや。僕はこれで。アズールに呼ばれたもので」
2人の間に流れた沈黙。
「…」
「…」
「…何見てんだよ」
「見てませんけど」
「…」
ムスーっと、全力不機嫌なフロイド先輩。
関わりたくないと思いつつ、なんとなく不憫になって、多少なら噛みつかれてもいいや、と、背伸びをして先輩の頭を撫でる。
「……何やってんの」
「小さい時、私はこれで機嫌がなおってたんで。…今もですけど」
「…あっそ」
「テラリウム、壊しちゃったんですか?」
「わざとじゃねぇもん」
「キノコは?」
「…土くせぇんだもん。直ぐに食わそうとするし」
唇を尖らせている。