第4章 社会人場地さん×長編年上ヒロイン
「さんに任せなさいな」
ドヤッとやかましい顔をしている自覚を持ちながら、優希の前に置かれたジョッキを思い切りあおった。
▽▲▽
「ね、ねえ。大丈夫?」
「……だいじょぶ」
「いくらなんでも飲みすぎだよ」
あれからいくつのジョッキを空にしただろうか。それすらもわからないくらい飲んだ私はぐらぐらと揺れだした視界に目をしかめながら、ううと小さな呻き声をあげる。
次の店に行こう、という声が遠くから聞こえてきているのでそろそろお開きになるはず。二次会には行かないから、ここさえ耐えればあとは帰るだけ。そうは思っていても体はなかなか言うことを聞いてくれず、一人で立つこともままならないくらいだ。
……圭介に怒られるだろうなあ、これ。
「俺が支えるよ」
そう言って私の腰に手を回してきたのは柳下。お酒が入っていることもあってか黄色いやじを飛ばすギャラリーをうっとうしく思いながら、彼から距離を取ろうとするも足がうまく動かずよろけてしまった。
身重かもしれない優希に酔っぱらいの介抱を頼むわけにもいかず、圭介が来る前に離れてもらえばいいか、なんて回らない頭で楽観的な結論を導きだした。それが正しいかどうかは置いておいて。
ふらふらとおぼつかない足取りで店の外へと向かう途中、私の腰だけでは飽きたらず太ももあたりを無遠慮に撫で回す柳下にジロリと抗議の視線を向ける。
「、腰も太ももも細いな」
「それセクハラって言うのよ」
「俺とお前の仲じゃん」
「もう終わった仲でしょ」
「そんな冷たいこと言わなくてもいいじゃん。それに──もっ回始めるっていう選択肢もあると思わない?」
いやらしい手付きでお尻を触られ、カッと頭に血がのぼる。ヒールで足を思い切り踏みつけてやろうと思ったけど千鳥足のこの状態ではうまくいかず、コンクリートを強く踏みしめただけになってしまった。これでもかと睨み付けるも気にした様子もなくどこ吹く風の柳下は、私のことを品定めでもするかのようにじろじろと上から下まで見てくる。失礼にもほどがあるでしょ、何様よ。
こうなったら最終手段。この場で吐いてやろうか、と自暴自棄になりかけたとき……ものすごい力で腕を後ろに引っ張られ、抗うこともできず後ろに倒れこむとドンッと何かにぶつかった。