第1章 場地圭介(高校生)×幼馴染みヒロイン(先生)
「だいたいお前は昔からーー」
そんな心休まらない秋が過ぎ去って、雪がちらちらと舞っていたクリスマス。家から近い公園へと、圭介に呼び出されたかと思えば「何もしなくて後悔したくねーから」という言葉とともに、好きだから付き合ってくれと告白の言葉をいただいた。
弟のような存在だった圭介が見せた男の一面にぐらっと来た私は、その場の雰囲気に流されるまま首を縦に振っていた。今思い返しても昔の私チョロいな。ちなみにその夜、やることもちゃんとやってしまった。ナニとは言わないけれど。圭介がナニをやらなくて後悔しそうだったのかは、まだ訊けていない。
まあ、そんなチョロい私がいたから、今は圭介のことを大切な恋人として見られるようにもなったんだけどね。結果オーライ。
「おい、話聞いてンのか?」
「聞いてる聞いてる。私は昔からチョロいって話ね」
「んな話一個もしてねぇワ」
「あれ? 違った?」
ヘラヘラとそんなことを言ってのける私にため息をついた圭介は、分厚い伊達眼鏡を邪魔そうに外しながら胸ポケットにしまった。わあ、たったそれだけなのに様になるのスゴいなぁ。
「警戒心なさすぎ」
「私が警戒心ないのは圭介にだけだよ。見てた? 私、ちゃんと谷田部の誘い断ったよ?」
「そもそも声かけられてンじゃねーよ」
「え、どうしようもなくない?」
「なくねェ。あの野郎、下心丸出しでに近づかやがって……」
「モテる女は困っちゃうね」
「ね。じゃねェ!」
ダンッ! と顔の横に圭介の腕が叩きつけられ、その整った顔が不機嫌そうに私のことを覗き込んでくる。圭介と理科準備室の扉に挟まれた私はどうしたものかと頭を捻ることも忘れ、吸い込まれるようにこの男の目から離せないでいる。こんな時にまで鼓動が早くなる私の心臓を誰かどうにかしてほしい。
時間にして数秒。じっと見つめ合っていた私達は圭介の行動によって、残念ながら終わりを告げてしまった。