第1章 場地圭介(高校生)×幼馴染みヒロイン(先生)
「準備室の鍵、今開けるね」
「おー」
ポケットから鍵を取り出してカチャカチャと扉を解錠し、場地くんを中に促せば待ってましたと言わんばかりにさっさと中へ入っていく。
それに習うように私も準備室へ入り、安堵から思わずほぅと大きく息を吐く。逃げられてよかったぁ。
「さっきは本当にありがとうーー圭介」
私の言葉にくるりとこちらを向いた彼は、その分厚い眼鏡を外すと、眉毛と同様につり上がった目を更につり上げて大きくため息をついた。呆れさせちゃったみたい。
「、お前気ィ抜きすぎ」
「えっ! 私が悪いの!?」
「俺以外の男に体触らせてンじゃねーよ」
「圭介、不可抗力って言葉知ってる?」
私が副担を持っているクラスの生徒、場地圭介こと、圭介はーー私の幼なじみ。小さい頃から一緒で、私が学生の頃なんかはバイクの後ろに乗せてもらったり、一緒にゲーセンなんかもよく遊びに行っていた。
そんな圭介は私の幼なじみであると同時に、私の恋人でもある。もちろん学校側には内緒の関係。
圭介が所属していた暴走族の抗争中に彼は大怪我してーーというか自らのお腹をナイフで刺して、病院へと運ばれたのが二〇〇五年のハロウィン。あのときは涼子おばさんを差し置いて病室で大泣きも大泣き、涙が枯れるくらい泣いて、もう目を覚まさないんじゃないかって毎日不安でいっぱいだったけれど……十一月三日、圭介は自分の誕生日に目を覚まして、その切れ長の目に私をまた映してくれた。
ちなみにそのときも大泣きしてしまい、圭介に「うるせェ」と開口一番に言われたのを今でも根に持っている。眠れないほど心配した私の優しい心を返してほしいものだ。