第3章 場地圭介(社会人)×千冬の親友ヒロイン(大学生)②
場地くんは百歩譲っていいとして──というかすでにもう知っているし、いいとして、何で見ず知らずの男性の前でもそんなこと言われなきゃならないの? 悔しさと恥ずかしさがごちゃ混ぜになった感情が、今にも爆発しそう。
元カレの言葉を聞いた友人らしき人たちは途端に好奇の眼差しを私に向け、上から下まで舐め回すように品定めしている。
「マジで?」
「体は無能とか、いいの顔だけじゃん!」
「ねえ、本当にマグロなの? 俺と一回ヤッてみない?」
「はあ? 俺が下手だって言いたいのかよ!」
「──実際下手だろ」
ぎゃいぎゃいと耳につく喧騒の中、場地くんの低く落ち着いた心地のよい声が辺りに響いて、しんと静まり返る。私の肩を抱く手に少し力が入ったのを感じて、怒ってるのかな? と隣を見上げたけど、表情のないその顔からは喜怒哀楽のどれも感じ取れなかった。
……こんな場地くん、初めて見た、かも。
「何だよお前、と付き合ってんのか? ヤッたことないからそうやって言えるんだよ」
「テメェこそ、自分の能無しをちゃんのせいにしてんじゃねーよ」
「はあ!?」
「好きなようにチンコ擦り付けるだけなら犬でもできるワ。相手のこと考えられねェなら、家でおとなしくオナニーしてろよな」
ド正論を豪速球で投げつける場地くん。何だったら投げつけた玉もトゲトゲで殺傷能力高めの玉だと思う。言葉の刃で滅多刺しにされた元カレは顔を真っ赤にしながらふるふると体を震わせて──怒ってんのか、それとも恥ずかしいのか、はたまたどっちもなのか。茹でダコもこの赤さを見たら卒倒するんじゃないかな。
でも場地くんのお陰で、少しだけ心が清々しい。
「ははっ! お前、ボロクソに言われてんじゃん!」
「うるせえ!」
友人からバカにされたのが気にくわなかったのか、大きな声をあげた元カレは私の腕を掴んで思い切り引っ張てきた。こ、転ける!
あまりの勢いに倒れこみそうになる私を、場地くんが支え直してくれたのとほぼ同時。場地くんは空いている方の手で、私を掴んでいる元カレの腕を思いきり捻りあげる。腕の骨がミシミシと悲鳴を上げながらギブアップを宣言した……のだが場地くんの気がそれではすまないらしい。