第3章 場地圭介(社会人)×千冬の親友ヒロイン(大学生)②
「場地くん、千冬、お疲れさま」
「おー」
「! バイト終わりか?」
「そうそう、カフェでのバイト帰りだよ」
場地くんと約束した日曜日の夜。すっかり暗くなった道を歩いてやってきたのは千冬が経営するXJランド──と言う名のペットショップ屋さん。決して今にも潰れそうな遊園地の名前みたいだなんて思ってませんよ、はい。
「千冬ぅ、先上がらせてもらうワ」
「ウス、お疲れさまです」
「ちゃん、ちょっと待っててな」
「うん」
そう言って荷物や着替えなどが置いてある奥の部屋へと向かう場地くんを見送っていると、横から腕をいきなり小突かれる。隣に立っていた千冬の方を見ると、何やらにやにやしながら
私を見下ろしている。というかにやにやしすぎて気持ち悪いわね。
「場地さんとデートか?」
「違うと思う。話があるって言ってたから」
「ふーん。何なんだろうな、話って」
「何だろうねえ」
一個思い付くものとしてはこの間の出来事がある。場地くんに快感というもの教えてもらったあの日……場地くんのことだから実は動画に撮っていて、それを使って私のことを脅そうとするとか、そういう人間の道踏み外すようなことはありえないだろうけど。けど話って言ったらそれだよね? それだよね!?
いきなりフェラしてこの女気持ち悪いとか思われた!? やべぇ女だと思われた!?
……ありえる。大いにありえる。
「千冬……」
「なんだよ」
「骨は……拾ってね」
「はあ?」
「私、今日が命日かもしれない」
「とうとう頭おかしくなったか?」
「ホントな。何勝手に死んでンだよ」
奥からひょこりと帰ってきた場地くんに、私はあなたに殺されるんです……とも言えず、あははと乾いた笑みを返すことしかできなかった。
さよなら私の人生。
「とりあえずどっかで飯食うか」
「最後の晩餐ですね」
「そんな食い物、給食で昔出たよな」
「場地さん、それはバンサンスーです」
そんな千冬のツッコミを聞きつつ、私たちは店をあとにした。
外灯を頼りにしながら行き先も特に決めず、町の方へととりあえず歩き出す。先ほどは千冬が話の主導権を握ってくれていたので楽だったけど、二人きりになって急に何を話せばいいのかわからなくなる。それに──。