第2章 場地圭介(社会人)×千冬の幼馴染みヒロイン(大学生)①
「わりぃ……大丈夫か?」
「ん、大丈夫だよ」
「無理させたな」
「ううん。私がね、場地くんにシてあげたかったの。私のこと気持ちよくしてくれたから、そのお礼に」
あんまり上手じゃなかったかもしれないけど。そう苦笑いする私に向かって「んなことねーよ」と笑った場地くんを見て照る臭くなる。
そのときちょうど、ピコンと場地くんのスマホにメッセージが届いたことを知らせる音が鳴り響いた。どうやら今から千冬が帰ってくるらしい。
「なんとか間に合ったな」
「あ、あのさ」
「ン?」
「このことは……絶対千冬に言わないでね。あと、私が悩んでたってことも」
私がそう言うと「おー」と言う返事と苦笑いが返ってきた。言わないでって言わなくても、場地くんなら言わないでしょうけど。念には念を入れて、ね。
「これは俺とちゃんだけのヒミツだな」
「墓場まで持っていってね」
「わーってるって」
「でも……」
「ん?」
「──ありがと。初めて気持ちよくなれて、嬉しかったし……スゴく気持ちよかった、です」
恥ずかしくなって最後の方は下を向きながらもにょもにょと頼りない声で彼に伝える。おうとか、ああとか、何か返事が来るのを待っているがうんともすんとも言わない場地くんを不思議に思って視線だけを少し上げてみる。
するとほんのりと頬を赤く染め上げた場地くんが手の甲でで自分の口を隠しながら、驚いたような……どこか嬉しそうな、でももどかしそうな。いろんな感情が混じった顔で私のことを見つめていた。
「場地くん?」
「……ズルい」
「え?」
「ちゃん、ズルいワ」
「な、なにが?」
「でも俺もズルいんだよなァ」
なんのことかわからず、ただ首を捻っていると「なんでもねェよ」と頭をぽんぽん撫でられた。そう言われてしまっては私からは何も言えないので、とりあえず小さく頷く。
「なあ」
「うん?」
「今度いつ空いてる? 言いたいことあンだけど」
「今度? 来週日曜の夜なら空いてるけど……」
「ン。じゃあその日、店まで来てくんね? そんときにまた話すワ」
何かを決意したような……そんな彼に私まで緊張してしまう。わかった、と返事をしたこのときの私は……その日が私にとって運命の日になるなんて思ってもいなかった。
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