第2章 場地圭介(社会人)×千冬の幼馴染みヒロイン(大学生)①
今度は舌先でつつ……と彼に刺激された首筋にぞくりと悪寒のようなものが走って、思わずびくりと肩を跳ねさせ、場地くんの方へ視線だけを送るとそれはもう楽しそーーーに目を細めてにやにやにやにやと笑っていた。ちょっとムカつく。
「キス、好きか?」
「別に好きでも嫌いでも……ない、かな」
「ふーん」
「わっ。訊いてきたのに興味ないんだ。やなやつー」
「興味ないっつーか……今からどーせ好きになるんだからよォ、一緒じゃね?」
「へっ? なに言っ──」
てるの。そう言いたかったのに全部は言わせてもらえず、まるで当たり前のように唇が重なる。重なっては離れ、重なっては離れ──啄むように触れるソレはほんの一瞬なのに柔らかくてとても温かい。
少しざりざりとした動物的な舌が私の下唇を舐めたかと思うと、ほんの少し離れた場地くんは「いい顔できんじゃん」と私を誉めてくれた。……けど今、私はいったいどんな顔をしているのだろうか。
「……あんまり見ないでほしい、かも」
「やだ」
「なっ」
「せっかくだから可愛いちゃん見とかねェともったいねー」
「もったいないって……んっ」
私が話している隙を見計らって場地くんは器用に舌を中へと差し込んできた。意思を持った生き物のように滑らかに動くソレに意識を全て持っていかれ、挙げ句のはてには思考回路が追い付かなくて、これが漫画なら私の頭から煙が音を立てて出ていることだろう。
逃げ惑う私を誘うようにうまく舌を絡めてくる場地くんに翻弄されながら、声にならない声と、うまく飲み込めなかった唾液が口の端から漏れていく。ムードもへったくれもなく、しっかりと目を開けていた私は場地くんの瞳の中に私の表情が映っていて……これのどこがいい顔なんだろう、と息も絶え絶えな自分の姿を見て不思議に思った。
「っふ、はあ、くるし……」
「まだへばんじゃねーぞー」
「もうちょっと優しくしてよ」
「優しいだろうが」
「優しい人は苦しくなるまでキスしないから」
「今までの男はヤサシーヤサシー男だったんだろうな」
「……そんなこと一言も言ってないじゃん」
「へいへい」
「って、あ! いつの間に服!」
「さっきキスしてるときだワ。なに? 気づかないほどよかったんか?」