第2章 場地圭介(社会人)×千冬の幼馴染みヒロイン(大学生)①
「……あー、ちゃんがヤりたくないってことか?」
「ううん。できないの」
「できない?」
「うん。気持ちよくなれないの、私が」
最初はいいよいいよと言っていた彼も、いつしかそういうことを求めなくなり、つまらない女だと吐き捨てて私の元から去っていった。
別にこう言ったことは初めてじゃない。何度かあって、その度同じような振られ方をしてきた。今度こそは……って思ってたんだけどな。
でもどうしてもダメ。触れられるとくすぐったさはあるものの気持ちよさなど何もなくて、キスで舌が入り込んでくる感覚が気持ち悪くてすぐに顔を背け、可愛く声を出すことも、男の人を受け入れることさえできなくて。どうして私の体はこんなにも感じにくいんだろう。
「まっ、今さら言っても仕方ないんだけどね。新しい恋を探すことにするよ」
「また同じように振られたらどうすんだよ」
「……何でそんなこと言うのよ」
「その感じだと一度や二度じゃねーんだろ? こういうの」
「はー! 場地くん鋭すぎてやんなっちゃう!」
精一杯冗談めかして言うも、彼にはそんなこともお見通しのようで少しばかり眉根を寄せて不満げな顔をしている。別に場地くんが不満に思う要素は一個もないんだけどな。
「男が下手だっただけだろ?」
「んーどうかな? 前の彼氏のときもそうだったし……私が不感症なのかも」
「……」
「だから気にし──」
「それならよォ」
少しの間、言葉を溜め込んだ場地くんは私の方へと視線を向け「俺で試そうぜ」とハッキリ言ってのけた。その言葉の意味を私はそのまま受け取ってもいいのだろうか? そう思いながら固まっていると、場地くんのビー玉みたいに綺麗な瞳が私を捕らえる。吸い込まれるように見つめられた私が絞り出した声は、なんとも頼りないものだった。