第9章 彼を知る人
「おれ、もう1回ミンゴのヤローぶっ飛ばしてくる!」
そう言って肩をグルグル回し始めるルフィさん。
「いやいや、もう海軍に捕まってるだろ。」
落ち着けよ、とウソップさんが宥める。
「…ドフラミンゴが、あなたにしてた事は監禁よ。それも普通はしてはいけないことだとは分かるわよね…?」
「えと…うん…」
「待てニコ屋、まさか…」
「ストックホルム症候群…かもしれないわ。」
聞きなれない単語が聞こえてくる。
なんだろう。
「ドフラミンゴのヤローが色々とひどい悪魔ヤローだってのはわかってるか?」
「それは分かってるよ、この国の人達に酷いことしてたもの。」
「お前に対しても!だ。」
「う、うん。分かってる」
返事がハッキリとしなくなる。
「お前に対して愛情があったと…そう思うか?」
ドキリとした。
色々と酷いことをされていたという自覚は勿論ある。
痛い事をされた事もあるし、嫌だと言う事もされたこともある。
愛情があったか…?
「…」
「いいか、愛情があるなら相手が嫌だと言う事は普通はしない。」
でも何度も言われた。
愛していると。
私はドフラミンゴが嫌いだったけど…
アイツは…
「っ…!」
口を抑えて慌ててトイレに駆け込む。
分かってる、好きな人に対してする行為でも行動でも思考でもない。
それでも、彼の過去は同情するほど酷いもので
それが彼を歪ませてしまったんだと、理解して共感してしまった。
「…トラ男。は大丈夫なのか?」
「時間は掛かるだろうな…16年はアイツにとって人生の半分以上だ…だがそれも込みで面倒見ると決めたからな」
なかなか骨が折れそうだ。そう呟いて顔を真っ青にして戻ってきたを見る。
「ごめん、やっぱりおかしいのかな…」
「もともとお前共感性みたいなの強かったからな…余計かもな。アイツ自身の過去の話とか聞いたんだろ?元天竜人だとか」
「うん…色々話してくれたから…」
話してくれた…か。
いちいち言い方に引っかかる。
「愛情はな、あったのか無かったのか…それはドフラミンゴにしか分からねえ。だがな、あったとして…それは歪んでる。」
うん。と元気なく返事をする。
さっきまで魚人島だ空島だと輝いていた瞳は元気がない。