第9章 彼を知る人
「受けた愛に理由などつけるな」
「自由に生きればいい…あいつならきっとそう言うだろう」
この人が、裏切られた理由を探すように。
ローもまた愛された理由を探していたのだろうか。
「おい、なんでお前か泣くんだよ」
「だって、コラさん…」
何度か聞いたことがあった。
自分には育ててくれた恩人がいた事。父親のように慕っていたこと。
「君は…」
「コラさんから聞いたことがあります。グスッ…兄のようにならなかったのは育ててくれた人のお陰だって。」
「!」
「元々の性格はあったんだろうけど、憎しみに囚われ続けなかったのは大きな愛を受けたからだって。」
それは、コラさんとの大切な思い出の一つだ。
「いつか受けた愛を自分もだれかにって。」
とても大切そうにその人を思い浮かべながら話してくれた事があった。
いつもの下手くそな笑顔じゃなくて、優しそうな顔をしていた。
「あの!コラさんの事、私大好きです。今までもこれからも…ずっと。
私…コラさんに会えて幸せです。」
そう言ったら2人とも笑っていた。
この2人もコラさんが大好きなんだろう。
もう居ない人。でもそれぞれの心の中に優しい思い出としてしっかり残っているんだろう。これからもずっと。
海兵さんに別れを告げ、ローとみんなが先に向かっている東の港へ向かう。
そんなに離れていないらしいので、ローと走って向かう。
「お前…本当にコラさんが好きなんだな」
「へ?あ、うん。」
「お前、ドフラミンゴに絆されそうになってたが、言っとくが根っこは2人とも同じだからな?兄弟なんだから…」
「あ、そっか。」
「だが、ドフラミンゴとコラさんは違うだろ。出生や環境で同情するな。そういう事だ。」
どうにもドフラミンゴに対して同情してしまうのだけど、そう言われるとそうだ。確かに。
2人とも同じ道を途中まで一緒だったはず。
「わ、分かった…」
「ったく…」
どうしてこんなにもドフラミンゴに対して強く出れないのか考えるが、よく分からない。
そうこうしていると、町中の瓦礫が浮かび上がりはじめる。
「藤虎か!」
「なにこれ!?」
「急ぐぞ!シャンブルズ!」
「なんで!?」
視界が変わったと思ったらまたローにおんぶされる。
「おせぇんだよ!息が上がっててもうバテバテじゃねぇか!」
言葉はきついのにどうやら気にしてくれていたらしい。
