第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「帰ってきてるなら言えよー!」
『え、この前お母さんたち会ってたよ
てっきり孝ちゃん知ってると思ってた!』
「いやいやなーんも聞いてねえべ?」
「なあ、って菅原さんと知り合い?」
私たちの会話にポカーンと口を開けているのは日向君だけではなくその場にいるほぼ全員らしい。
『えと、幼なじみだよ!
私と孝ちゃんのママが学生の頃から仲良しで、その子供の私達も必然的に仲良くなったって感じかな?』
「あ、じゃあこの子が噂の東京の子か」
『うわさ…ですか?』
「ああ、スガがよく 「ああああ!大地ストップ!」」
大地さんの言葉を遮った孝ちゃんの耳が少しだけ赤い。
「スガさん孝ちゃんて呼ばれてるんすか?」
坊主の田中さんが目をぱちくりさせながら聞く
「ん?ああ、ちっさい頃から一緒にいたしな。まあでも孝ちゃん呼びはしかしないけどな。」
「こーんちわーーっす…あ…?」
もう一度勢いよく開いたドアから聞こえた大きな挨拶と戸惑いのような声。
「あ…あの、うちのマネ希望の1年生ですか?
可愛い美しい天使…天使かなにかですか…?」
私の目の前でピタリと止まって真剣な顔で聞かれるから驚いた。天使?私が?そんなに瞳を輝かせてどうしたのだろうこの人は。
「こーら西谷。この子固まってるぞ。」
「…っは!すんません!つい!
でもでもでも旭さん!
マネ増えたら嬉しいっすよね!」
西谷と呼ばれた小柄な男の子と旭さんと呼ばれた背の高い髪を結んでいる男の人。
「おー西谷、旭、この子今日は見学だから
んで、この子スガが話してた東京の子だってさ」
「あー、スガが会いたくて死にそうになってた東京のね!ここに居るってことは烏野の生徒だろ?戻ってきたのか?」
ん?孝ちゃんが私に会いたかったって?
「あ…さひ!言うなよ!馬鹿なの!?」
「ぶっっは!!」
真っ赤な孝ちゃんと笑いをこらえきれなかった様子の大地さん。きっと烏野高校のバレーボール部は仲がいいんだなあ。こんな人たちと一緒に過ごす高校生活は素敵なものに違いない。