第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「ー!いくぞー!」
『んー!今行くー!
じゃ、また明日ね!』
日向くんからバレー部見学のお誘いを受けてから
早1週間がたち、今日は約束していた日。
帰りのチャイムがなった瞬間廊下へと走っていった日向くんが私を呼ぶ。直前まで話していた友達に『またあした』と手を振って、走っていく日向くんを追いかける。
『ちょ…っと速いって日向くん…っ』
ガラガラガラ
「こんちはーーーっす!!」
「あぶない!!!」
勢いよく体育のドアを開けた日向くんの声を
遮るような誰かの焦り声。
目の前に飛び込んできたバレーボール。
咄嗟に両腕を構えて返す。
飛んできた方向へと放物線を描いて戻るボール。
「ナイスレシーブ!」
「こら田中!先に謝りなさい!」
「す、すんませんしたああああ!!!」
「ごめんな、びっくりさせて
怪我はない?」
『あ、いえ!全然です!』
「ところで見事なレシーブだったけど…
ここは男バレだし…マネージャー希望とかかな?」
『あ、えとー』
「だいちさん!こんちわーっす!
こいつマネージャー候補です!連れてきました!」
「なんだ、じゃあ連れてこられたのか、ははっ
見学ならあのメガネの女の人に聞きな
うちのマネージャーだから」
『はい、わかりましたっ』
この人すごくしっかりしてて優しい。
3年生かな?日向くんがだいちさんって呼んだからきっとこの人は「だいち」って人なんだろう。
ガラガラガラ
背を向けていた体育館のドアが開く音。
「おースガ」
「「スガさんおつかれっすー」」
どうやら今度は「スガさん」という先輩がいらっしゃったらしい。挨拶をせねばと思いクルンと体の向きを変える。
「…っ?」
『へっ?』
「だよな?」
『あ、え…こうちゃん!?』
「やっぱだ!こっち戻ってたのか!」
そうか、こうちゃんは「菅原」だから「スガ」って呼ばれているのか。
菅原孝支。こうちゃん。
お母さん同士学生の時から仲が良かったらしく、私達も自然に仲良くなった。2つ上の優しいお兄ちゃんって感じ。いつも遊んでくれてたな。
『高校からはまたこっちで過ごすの
でもこうちゃんが烏野にいると思わなかった!』
また会えるなんて嬉しいなあ懐かしいなあ