第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
このまま部屋に戻っても
潔子さんを起こしかねないし
外に置いてあったベンチを思い出して
夜風にあたりに行くことにした。
孝ちゃん悲しい顔してたな。
「…ちゃんっ」
少し息を切らした声。
まさか私を追いかけてきてくれたのだろうか。
『…っ旭さん?』
「あ、追いかけてきたりしてごめんっ
その…俺事情知ってるし…って泣いてる!?
ああああどうしよう、ごめん見られたくないよね!?」
『…ごめ、なさい。
皆さんの雰囲気壊しちゃって…』
勝手に怖がって震えて…泣き出して。
部屋を飛び出して…みんな混乱してるよね。
孝ちゃんの悲しそうな顔が頭から離れない。
「ちゃんが気にすることじゃないよ。
…えっと。ごめん少しだけ…っ」
私に1歩近づいてきた大きな体がフワッと私を包み込んだ。優しくて落ち着く大きな手が頭を撫でてくれる。助けてくれたあの日から旭さんは怖くない。いきなり触れられても全然大丈夫なんだな、って最近気がついた。
「泣き顔見られたくないかな…って。
その、怖かったらすぐ離れるから言って!?」
『ふふ、怖くないです。ありがとうございます。』
「あれ…笑ってる?涙は??」
『さっきまで泣いてましたけど。
旭さんの慌てようが面白くて引っ込みました!』
「ん、んーそれならいっか…?」
『また旭さんに助けられちゃいました…』