第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「俺たちはこっちでメニューの話しようか」
月島くんを追いかけ回し始めた孝ちゃんを横目に私は大地さんと明日のメニューについての話し合いを始めた。
『えっと、このメニューなんですけど…』
「うんうん」
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「わかった、ありがとう。
じゃあそうしよう。」
『はいっ』
変更に合わせて何ヶ所かメニュー調整をして話はまとまった。あとは朝起きたら潔子さんに伝えるだけ。
「あ、ちゃん…消灯すぎてるよ。
部屋戻らなくて大丈夫か?」
教えてくれた旭さんの声に時計を見てみる。
『っは!ホントだ…っ
ごめんなさい皆さん疲れてるのに…!』
「いや、気がつけなくて悪かった。そろそろ武田先生が見回り来ると思うし部屋まで送るよ」
ごめん、と申し訳なさそうな表情をした大地さんが立ち上がって扉を開けに行ったと思ったらすぐに閉じて戻ってきた。
『だい…ちさん?』
「やばい武田先生きた…
か、かくれるか!?」
『は、はい…っ』
コンコン 「みなさーん、寝てますかー?」
『ひいっ!!』
「こっち!」
誰かにグッと手首を掴まれ布団に引き込まれる。
後ろからお腹に回った腕。暗い布団の中。
…こわい。
心拍数が上がっていくのが分かる。
だけどこの腕はバレー部の誰か。
怖くない…怖くない………っはあ…はあっ
「寝ていますね、今日はお疲れ様です。
皆さんおやすみなさい。」
そう言って部屋を出て遠ざかっていく武田先生。
「…行ったか?」
西谷さんの声に視界が明るくなって布団が捲られたことに気づく。怖くて後ろを見られない。多分いま…すごく震えてる。
「…っ?」
背中から聞こえた声。
『こ…うちゃん…っ?』
どうしよう…孝ちゃんだ。
私を布団に入れて隠してくれたんだ。
『はあ…うっ…はぁ…っ』
上手く息ができない。
怖かった気持ちと申し訳なさで涙が止まらない。
「…ほんとにどうした…っ?
俺だよ、孝ちゃんだよ…っ」
悲しそうに歪む孝ちゃんの顔を見るのが辛くて
どうしたらいいか分からなくなって
『ごめ…なさい孝ちゃ…んっ』
それだけ言って部屋を飛び出した。