第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「ちゃん行くよ」
『あ、はい…!』
先輩をスルーは慣れないなあ…。
「ガン無視まじ興奮するっス…!」
田中さんがなんか言ってるけど潔子さんの華麗なスルーすらキュンポイントらしい。一応先輩だしスルーできなかった私は
『失礼します…っ』
通り過ぎた先輩2人に顔だけを振り返ってペコっと会釈をする。向き直ってスタスタと歩いて行ってしまう潔子さんについていく。ここまでが最近のお決まり。
「…うっ。無視しきれずに振り返ってニコってするの破壊力やべえ心臓いてえ。りゅう…これが恋煩いってやつなんだな…っ!」
「おうノヤっさん…!
頑張ろうぜ、同志よぉぉお!!」
いや…、ここまでがお決まり。
女子部屋に戻って私たちは消灯時間まで今日の皆のプレイやスコアをノートにまとめる。起きてから寝るまで合宿中のマネージャーって大変だな。だけどこのノートも去年は潔子さん1人で書いてたんだよなあ。すごいなあ。
『去年までは1人でこうやって
消灯までの時間に作業してたんですか?』
「んー、ほんとは私この合宿場から家が近いから去年までは帰って家でやってたんだよ。今年はちゃんがいるから私も泊まることにしたの。」
『そうなんですか!
あの…帰りたかったですよね…?』
「そんなことないよ、どうして?
私ちゃんといたくて残ったんだよ?」
『うぅ…もう潔子さん大好きです…!!』
「あはは、私もちゃん大好きよ」
時折こうやって話しながら作業を進めた。
『…なんか喉乾きません?』
「たしかに喉乾いたね
下に自販機あったよね?いく?」
『あ、いや!私買ってきます!』
「そう?じゃあお願いしようかな。
わたしこのままノート記入してるね」
『はい、いってきます!』
1階にある自販機まで急ぐと
誰かがピッとボタンを押す音がした。