第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
予定より少しだけ早く夕飯の支度が終わったけれど食堂に向かうともう皆が集まっていた。どうやら縁下さんが声をかけてくれたらしい。夕食の時間が早まるとお風呂の時間が長くなるから嬉しいな。
『縁下さん、皆さんに声掛けてくださって
ありがとうございますっ』
「いや、そんなの全然。
なんかあったらいつでも言って」
『はい、そうしますっ』
縁下さんて周りをよく見てて優しい人だなあ。
「ー、こっちおいで!」
孝ちゃんが自分の隣の席をポンポンと叩いて私を呼ぶ。
『私の席あっちです…よ?』
私の席は月島くんの隣に用意されていた。
学年ごとに席が分けられているのだ。
「別にあっちで食わなきゃいけないって決まってないだろー!一緒に食べようよ!」
『んー、分かりました。』
言われるがまま月島くんの隣に用意していた夕食を孝ちゃんの隣に移動させた。月島くんが何してんの、って顔で見てたな。
「皆、1日お疲れ様。
今日からGW合宿が始まったわけだけども…
まずは今日1日俺たちのためにドリンクを作ったりスコアを記入したり、いつもは無い洗濯や料理をしてくれたマネージャー2人に感謝をしよう。2人ともいつもありがとう。合宿は仕事量が多いと思うがよろしく頼みます。」
深々と頭を下げた大地さんに続き他のメンバーも「ありがとうございます」と頭を下げる。なんだか胸がジーンと温かくなる。少しでもみんなの力になれていたんだな、と思えて安心した。
「それじゃあ…いただきます!」
「『「いただきまーすっ!」』」
みんなの食べっぷりに明日も夕食作りを頑張ろうと思える。こんなに美味しそうに食べてくれると作りがいがあるよね。
「、これもらっていい?」
孝ちゃんが指さす先には真っ赤なトマト。
『あ…うん』
「さんきゅ!かわりにコレやるよ!」
そう言って孝ちゃんは私のお皿にサクランボを1粒。
『あ、ありがとう!』
「ん、いーえ」
私がトマト好きじゃないこと覚えてたんだ。
残してしまいそうで困っていたから助かった。
私が苦手なものを孝ちゃんはいつも代わりに食べてくれた。そして私の好きなものと交換してくれる。いつも助けてくれる。孝ちゃんのこういう優しさが大好きだ。