第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
side東峰 (現在)
「…っ。そうなんだ…。」
『こんな重い話…ごめんなさい。』
「いや、言いづらかっただろうに話してくれてありがとう。昨日あんなに怯えてた理由も分かって良かったよ。」
すごく言いづらかったはず。
こんなこと誰にも知られたくないはず。
『昨日…また思い出して…声が出なかったんです。旭さんが来てくれたときは体の力が抜けちゃって。本当にありがとうございました。』
「いや、実はあの道いつも通らないんだけどさ。ちゃんの声が聞こえて思わず足が向かってたんだ。連れていかれる前に見つけられてよかったよ。」
『この事…誰にも言わないでください。
特に孝ちゃんには…心配させちゃうので。』
「わかった。約束するよ。
確かにスガが知ったら四六時中そばに居そうだもんな」
『ありがとうございます。
助けてくれたのが旭さんで良かったです。』
「なんかあったら…俺じゃ頼りないかもしれないけどさ。話くらいはいつでも聞くし…その、黒尾さん?って人が忙しいときは俺に電話かけてくれてもいいから。」
「はい…っありがとうございます!」
スガも知らない話。
不謹慎かもしんないけど、こんな話でもちゃんと2人だけの秘密ができたみたいで嬉しいと思ってしまう。頼ってくれて嬉しいと思ってしまうんだ。
「そろそろ休み時間終わるし教室まで送るよ」
『はい。ありがとうございます。
お弁当箱もらっちゃいますね?』
「いや、洗って返させて!さすがに!」
『私が勝手に作ってきたので…っ』
「俺がそうしたいんだ。いいかな?」
『はい。ありがとうございます。』
2人で空き教室から出ると誰かがこちらに走ってきた
「さんだよね!?」
サッカー部の部長か。
確か菅原たちと同じクラスの。
一瞬ビクッとしたちゃんを背中に隠す。
「ちゃんに何か用か?」
「あ、いやそんな警戒しないで!
謝りたいだけだから!」
「え?」
「昨日…ウチのバカな2年に絡まれたろ?
ごめんなさん!怖かったよな。」
ああそうか。昨日ちゃんを連れていこうとしていたのはサッカー部の2年生だったな。わざわざ部長が謝りに来たのか。