第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
この日を境に私は男の人に触れられるのが怖くなった。
プリントを受け取るのに指が触れたとき。
私を呼び止めるのに肩を叩かれたとき。
廊下を歩いていて後ろからぶつかられたとき。
ふいに触れられるとビクッとしてしまう。
あの記憶で頭がいっぱいになる。
3年生が卒業するまでは、研磨くんや凛花さんたちが目を光らせていてくれたお陰で何事も無かった。
私が3年生にあがった時に高崎先生は移動になった。
誰も話してないからたまたまだとは思う。
それでも記憶は消えなかった。
あの日からしばらく夜になると思い出して眠れない日々が続いた。そんな私に気づいてそばにいてくれたのは黒尾さんだった。この人に触れられるのは不思議と怖くなかった。むしろ落ち着くし安心する。
この頃の私は黒尾さんに抱きしめてもらいながら
眠るのが1番よく眠れた。
1番落ち着くと思っていた孝ちゃんよりも大きな体に包まれて私は毎日眠りについた。ただそばに居てくれることがたまらなく私を安心させてくれた。
宮城に戻ってきても思い出すたびに
黒尾さんに電話をかけた。
声を聞くと落ち着く。眠るまで繋いでくれる通話はまるでそばに居てくれてるみたいな感覚になってすごく安心する。