第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「よ、!」
『あ、高崎先生!』
ギャラリーの向こうに見えていたのは
私たちの英語を担当している先生だった。
なぜかとても良くしてくれる高崎先生。
テスト前は担当教科でなくとも勉強をみてくれるし、お弁当も財布も忘れた日はパンを何個もくれたりした。黒尾さんと研磨くんと帰る約束をして教室で待っている時は話し相手になってくれたし、大雨が急に降ってきて傘を忘れた日は車で家まで送ってくれた。
爽やかな感じで背も高くて女子生徒から人気。
クールな感じだけどよく笑う人。
そのギャップにみんなやられちゃうんだよなぁ。
「夏休みなのにわざわざ男バレ見学?」
『あ、はい!
今日は卒業した黒尾さんたちが来ているので
久しぶりに見に来てみました。』
「へー、黒尾とまだ仲良いんだ?」
『はい、仲良くしてくれてます!』
「なんか黒尾ってのSPみたいだよな」
『SPみたいですか?』
「俺のに近づくな、てきな?」
『あはは、なんですかそれ〜!』
「はは、まあいいや!
これやるよ、好きだろカルピス?」
『え!いいんですか!喉乾いてました〜』
「あーそれ飲もうとして1回開けたんだけど
やっぱ気分じゃなくてコッチに買い換えたから
口付けてないし安心してな」
そう言ってコーラを見せる先生。
『ふふ、ありがとうございます!』
「あーあと、キリいいとこでいいからあとで資料室きてほしい。渡したいプリントあるからさ。休み明けでもいんだけど早い方がいいから」
『分かりました。
あと少し見学したら行きますね』
「ん、まってるわ」
じゃあ、と先生はギャラリーから出ていった。
私は貰ったカルピスをなんとなく確認して
確かに減ってないから新品なんだな、と
疑いもなく口をつけた。
渇いたカラダにカルピスがしみる。
おいしすぎる…潤う〜!
しばらくすると体が内側から火照るように熱くなってきた。夏休みだし、体育館だし、皆がプレイしてるから暑いのは当然なんだけど…なんか違う。
暑さを誤魔化すように何度も何度も
カルピスを喉に流した。