第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
『聞いてくれてありがとうございます。
少し…落ち着きました。もう大丈夫です。』
「嘘つくなよ」
『え?』
「声震えてんぞ。
寝るまで繋いでてやるから安心しろよ」
どんな小さなことにも気づいてくれるから
私はいつも甘えてしまう。
『…ん。お言葉に甘えます。』
「よろしい。
素直に甘えてくれればいんですよ」
『…ほんとにありがとうございます。』
「いえいえ。
可愛い後輩のためですから」
『えへへ…優しいなぁ。』
「もー時間遅せぇから風呂とメシ済ませなさい。
電話繋ぎっぱでいいから。
が寝たら適当に切っておきます。」
お言葉に甘えて電話を繋いだまま寝る支度を済ませていく。特に会話をする訳でもなくお互いの生活音だけが聞こえる通話。
『あ、私もうベッド入りますね』
「んー、ゆっくり休めよ」
『こんな時間まで…すみません。
部活で疲れてるのにありがとうございます。』
時計を見ると23:00。もうすぐ今日が終わる。
「気にするなっていってるでしょーが
毎日掛けてきてもいいから。な?」
『そんなこと言ったら本当に毎日掛けますよ?』
「ははっ、待ってるよ」
『それじゃあ…おやすみなさい。』
「はい、おやすみ」
『電話繋いだままいてくれて
ありがとうございました…っ
黒尾さん。』
「ん、おやすみ。」
プツンと途絶えた意識。
朝起きると当然ながら通話は切れていた。
もう一度お礼を言うために
メールBoxを開く。
〈寝息聞こえてきたから切っといた。
一緒に寝てた頃を思い出しました、おやすみ。〉
これはきっと寝る直前、電話を切ってから送られてきたメール。そのあとにもう1件。時間が空いてから送られてきているものがある。
〈おはよう。よく眠れたか?
俺はこれから研磨起こして朝練行ってくる。〉
こっちは朝起きてから送られてきたもの。
離れていても気にかけてくれるなんて…優しい先輩だなあ