第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
旭さんに送って貰って孝ちゃんの家に帰るのはなんか気が引けるな。怖いけど…今日は自分の家に帰ろう。
『あ、えと。私の家ここです』
「おー、ほんとにスガんちと近いんだな」
『送ってくださってありがとうございました!』
「全然!無事に送り届けられて良かったです。」
あーでも怖いな…。やっぱ思い出してしまう。
『あの…旭さん…っ。』
背を向けて歩き始めた旭さんのシャツを後ろからつかみ思わず呼び止めてしまった。このまま1人きりになるのが嫌だった。
「あ…うん?どうしたの?」
『私…の話…聞いてくれませんか…?』
宮城に帰って来てから誰にも話していないあの日のこと。東京にいた時ですらほんの数人しか知らない話。あんまり人に話すことでもないし。だけど助けてくれた旭さんに話してしまいたかった。
「うん…手震えてる…大丈夫?
でもこんな時間だし…さっきもあんな事があったから今日はもうお家入ってゆっくり休んだほうがいいと思う…な?明日の昼休みにでもどう?」
『…はい。そうします。』
「うん、そうしようか。じゃあ明日ね」
見えなくなるまで旭さんの背中を見送ってから自分の家に入った。パタンと玄関の扉が閉じると同時、どうしようもない恐怖感が襲ってくる。考えないように考えないように…思えば思うほど頭から離れない。
怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い…
そうだ…電話…っ!
プルル
掛けた電話はワンコールもしないうちに繋がった
「もしもーし、?どうした?」
『…う……っうぅ...』
「おい、何があった!?
今どこだ?家か?」
『家にいます…。
ごめんなさい急に電話して…っ
部活大丈夫ですか?』
「俺の心配なんかいんだよ
部活はさっき終わったとこ。
話ならいつでも聞くっつったろ?遠慮すんな。なんかあったんだよな?怖くなって俺に電話かけてきたんだろ?が寝るまで繋いでてやるから安心しろ。」
私は帰り道にあったことをゆっくりと話した。何も言わずに聞いてくれる電話の向こうにいる彼のおかげで少し落ち着いてきた。
『…ってことがあって怖くなっちゃって…。』
「そうか。そりゃ怖かったな。」
優しくなだめるような声。
この人の優しさに何度救われただろう