第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
ずっと掴んでいたことに気がついて
申し訳なさそうにパッと俺の腕を離すから
「あ、いや別に離して欲しいって意味で言ったわけじゃなくて…!手が…まだ震えてるから…それに女の子が俺の事怖がらずに近くに居てくれるのとか…あんまないから俺緊張しちゃって!ごめん!」
離れていった体温が寂しくなった。
『旭さんて…優しいですよね。
怖いなんて思ったことないです。』
確かに彼女は初対面から普通に接してくれる
それに…
「女の子から怖がられなかったことあんまりないし、名前で呼ばれることもあんまりないから俺…嬉しいんだ。」
『なまえ…?旭って苗字ですよね…?』
「え、え、名前だよ!?
俺、アズマネ アサヒ!」
『えっ!ご、ごめんなさい!
初対面の日から馴れ馴れしく名前を…っ
あず…まねさん。の方がいいですよね…?』
あれ…いやだな。
ちゃんには名前で呼ばれたい。
って思っちゃう。
「いやいや、なんか急に距離感じるし…っ!
今まで通り呼んでよ?名前で呼ばれるの嬉しくて…
俺もついちゃんって名前で呼んでるし…はは」
女の子を下の名前で呼ぶことなんてほぼない。
だけど初対面で怖がられなかったこととか、名前で呼んでくれることとか、なんか全部新鮮で嬉しくて…俺もちゃんを名前で呼ぶことにしたんだ。
『じゃあこれからも旭さんって呼びます!』
「うん、俺も。ちゃん。
あ、でも大地も名前で呼んでるよね?」
『あ、それは皆さんが大地って呼んでいて…上の名前が分からなくて…しばらく経ってから澤村さんって知ったんですけど、大地でいいよって大地さんが言ってくださったので…あはは。』
「なる、ほど。
まあ俺たち女の子に下の名前呼ばれることほとんど無いからな。俺も大地も嬉しいんだよ。」
『えへへ、じゃあこれからもたくさん呼びます!』
満面の笑みで俺を見上げるちゃんに心臓がトクンって跳ねた。少し前から薄々気がついていたけれど、自覚するのは恥ずかしい。でも俺はきっとちゃんのことを好きになってる。なんてスガには言えないな…。