第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「あ…えと、立てる?」
『あ、少ししたら…多分立てます。』
まだ震えている彼女に
なんて声をかけたらいいのか分からなかった。
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学校からの帰り道、
暗くて細い道のある方から声がした。
『わたし…行かないです…!』
あれ…この声って。
毎日聞いている声を聞き間違えるわけない。
何人かの男の声に混ざって震えたような怯えている様な女の子の声。怖いとかそういうのが頭から全部抜けて気づいたら声のする方へ足が向かってた。角を曲がると烏野の制服を着た男が3人がかりで女の子の手を引いたり背を押したり…誘拐にしか見えないその光景に一瞬体が強ばった。
だけどその女の子が
『離して…くださ…「きらちゃん?」』
『あ…さひ…さん?』
やっぱりキミだったから。
「3年の東峰さんだ…」
この男の子たちは…あー、たしかサッカー部。
グラウンドで練習しているのを見たことがある。
2年生だろうか。俺のことなんで知ってるんだろう。
「君たち何してるの?」
ただ普通に聞いただけなのに 「すいません」 ってすごい勢いで逃げられた。俺ってそんなに顔怖いかな…凹む…。
安心したのか突然その場にしゃがみこんだちゃん。尋常ではない怯え用に俺も目の前にしゃがんで声をかける。
『あさひさ…んっ!』
目に涙をいっぱい貯めた彼女が目の前にいた俺にガバッと抱きついた。そんな事しなそうな子だから驚いたし正直俺の心臓ドクドクいってる。よっぽど怖かったんだな、と偶然ではあるけど通りかかってよかった。
しばらく経ってようやく立ち上がれるようになった彼女の隣に並んで歩き家まで送る。いつもスガがべったりくっついてるから2人きりで話すって初めてかもしれない。
「あ…えっと…ちゃん」
『はいっ』
「その…腕…が。」
『あ、ご、ごめんなさいっ』
立ち上がる時に捕まっていた俺の腕をずっと掴んでいたちゃん。まだ震えている小さな手。だけど自分の心臓がドクドクうるさくて思わず言ってしまった。別に触らないで欲しいとかじゃなくて、ただ緊張するから…。