第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
孝ちゃんの家にお泊まりさせてもらった日からしばらく経って来週はいよいよGW合宿がある。因縁のライバルらしい音駒高校との練習試合を前に皆のやる気をより一層感じられる。
「!」
『あれ…孝ちゃ、菅原さん!』
いかんいかん、今は部活中!!
「言い直すなよ寂しいなあ」
『へへ…えと、なんか用事ありますか?』
「あ、そうそう。
今日部活終わったら日向の自主練付き合うって約束しちゃっててさ。一緒に帰れないんだ…ごめんな?」
本当に申し訳なさそうに眉をさげる孝ちゃん。
『そんなの全然ですよ!
来週は音駒とですもんね!』
「うん、だからもしかしたら合宿まで俺も自主練するかもしんないんだ。」
『分かりました!
1人で帰れるので頑張ってください!』
「ごめんな、さんきゅ!」
どうしてこのとき待ってるって言わなかったんだろう。球出しくらいなら私にもできるのに…なんで1人で帰ったんだろう。
『お先に失礼します!』
チラホラと残る自主練組に会釈をして私は家までの道を歩く。いつもは孝ちゃんと一緒に歩いてたからあんまり気にしてなかったけど結構暗いなあ。
「ねーもしかして1年のちゃん?」
『えっ?』
不意に名前を呼ばれて振り返ると
そこには男の人が3人立っていた。
全く知らない人。誰だろう。
だけど制服は烏野だ…
「あ、絶対そうだ!」
『え…っとどちら様でしょう…か?』
「俺ら烏野の2年!サッカー部だよ!」
『あ…どうも…?』
2年生のサッカー部がなんの用だろう。
背の高い男の人に囲まれるなんて部活で慣れているはずなのに怖くて仕方ない。知らない人だから?
ううん違う。目が…怖い。あの日を思い出す。
逃げなきゃ…
「そんな警戒しないでよ?
1年にすげぇ可愛い子入ったってすごい噂だよキミ。俺らのマネージャーなってくれたら頑張れるんだけど…どう??」
『えと…私、男バレのマネージャーなので。』
声が…震える。怖い。
「うん知ってるよ。やめてこっち来ない?」
『バレー部の皆さんと頑張るって決めたので…』
「でも俺たちキミが来てくれたらほんとすげえ頑張れる気がする」
いやだ…帰りたい…怖い。