第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
泣くつもりなんて無かったのに。
もう怖くないって思ってたのに。
相手は孝ちゃんなのに…傷つけたよね。
孝ちゃんを突き返したときの悲しそうな表情が頭から離れない。朝だって思いっきり押し返してしまった。私は…どんな顔してた?
あの日から…男の人に触れられるのが怖い。
たまらなく怖いの。
昨日の夜…自分から孝ちゃんにぎゅーを頼んだときは平気だったのに。優しい匂いがしてあったかくて落ち着く。なのにさっきは突き返した…こんな私…嫌だよ。
嫌われたくない。知られたくない。
そんな私の心を読んだように
「…俺の前では無理しないこと。
何があったか聞かないから。な?」
孝ちゃんは優しい言葉をくれる。
「聞かなくていいからいつでもおいで」
いつも受け入れてくれる。
そのあと教室にまで送ってくれた孝ちゃんが一瞬躊躇するような仕草をみせてから、ポンっと私の頭を撫でた。気を遣わせちゃってる…ごめんねって気持ちでいっぱいで。そのかわりに私は大丈夫だよって意味を込めてニコッと笑ってみせた。
教室に戻るなり友達に囲まれた
「ねえ!今のって男バレの三年生?
菅原先輩って人!?」
『え…あ、うん。菅原先輩だよ』
「わー!近くで見ると更にかっこいい!
しかも最後の頭ポンポンなにー!!?
…付き合ってんの!?」
『へ…?いやいや幼なじみだよ!』
孝ちゃんって人気なのかな…?
まあ優しくてかっこいいもんなあ。
そりゃ人気か!自慢の幼馴染だなあ!
「えー!にしては菅原先輩の笑顔が柔らかすぎ!
THE好きな子に見せる顔だった!!」
『なにそれっ!』
ほんと、なにそれ!
今までこんなに一緒にいるのに好きなんて素振りなかったし言われたこともない。こんなチンチクリン興味ないでしょう。