第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
「ー!部活行くぞ!」
『あ、うんっ』
HRが終わると同時に私の荷物まで抱えて走り出した日向くん。ほんとにバレーが好きなんだなあ。
体育館へと走っている途中
「ちゃんっ」
私を呼ぶ声が聞こえた
すぐに立ち止まって振り返る
『あ、潔子さん!こんにちは!』
「昨日も部活来るとき走ってなかった?」
『日向くんがHR終わるなり私の荷物まで抱えて走り出したんで追いかけてます…!』
「あーはは、日向ほんと元気だよね」
もう遠くを走っている日向くんを見つめながら笑う潔子さんは今日も綺麗だ。昨日知り合ったばかりの私なんかにも見かけてすぐに声をかけてくれて…次の春が来たらもういないのかと思うと急に寂しい気持ちになる。
潔子さんと並んで体育祭に入るとすぐに視界に飛び込んできた2人。田中さんと西谷さん。すんごい勢いでこちらへ走ってくる。固まっていると潔子さんが私の肩をグッと押して屈んだ。
私たちの頭上を通り外へと飛び出してしまった先輩2人を潔子さんは気にすることなく今日のメニューの説明をし始めた。
私も慣れなきゃなあ…。
「なあ!!」
先程派手に外で転んでいたはずの西谷さんが私の目の前に立ち大きな声で私の名前を呼ぶ。
『は、はい!』
つられて私の返事も大きくなる。
「ってスガさんの彼女か!?」
『い、いえ…!』
「それなら…俺と!結婚してください!」
ガバッと頭を下げて手をこちらに伸ばしている。
な、な、何が起こった!?プロポーズ!?
『に、西谷さん!?』
なおも動かない西谷さんの手を誰かの手が握る。
「…っちからあああああ!?」
えっと、えっとたしか…縁下さん!2年生の!
下の名前はチカラさんって言うんだ!
「こら西谷。困ってるだろ。」
ごめんな、と一言いった縁下さんに西谷さんはズルズルと引きずられていく。ケラケラと大袈裟に笑う田中さんに「お前だって潔子さんに!」と返す西谷さん。前にも似たようなことがあったのだろうか。だとしたらとんでもないコンビだな。
「ちゃん大丈夫?
あの2人は無視していいからね。
なんかあったら私に言って」
『心強いです…!』
優しくて強くて綺麗だなんて潔子さんは女神だ。